日本映画の証人 菅井きんさん逝く




脇役女優の代表格であった菅井きんさんが、今月10日に亡くなられていたようだ。そのことが今日正式に発表された。享年92歳だった。

菅井きんさんの代表作といえば、必殺仕事人シリーズの主役中村主水をムコ殿と呼ぶ姑の役だろう。これ以外にも映画・ドラマの主婦やお婆さんといえば、一時やたらとこの人が演じていた印象がある。市井のおばちゃん役として欠かせない人材だったと言えるだろう。


その長い俳優のキャリアで名脇役と重宝され、出演作の中には名作と呼ばれる映画やドラマも多数ある。映画だけに絞らせてもらうと、伊丹十三監督の『お葬式』もそうだし、他に主なものだけ紹介すると今村昌平監督の『復讐するは我にあり』と『豚と軍艦』や川島雄三監督の『幕末太陽伝』もある。

意外なところでは本多猪四郎監督・円谷英二特撮監督の東宝映画『ゴジラ』の第一作目にも出演しているが、その本多猪四郎監督の盟友であった黒澤明監督の作品にもいくつか出演している。中でも一番古い出演作が、日本映画史に残る名作の『生きる』だ。

この作品の中で菅井きんさんは、市役所へ陳情に来た主婦たちの一人として出演している。この頃はまだ20代半ばのはずだが、すでに老け役をやっていて可笑しい。のちに中高年役を演じるようになった時とあまり雰囲気が変わらないので、出てきたときすぐに見分けがついたぐらいだ。

菅井さん絡みで一番印象に残ったシーンは、主演の志村喬さんが雨に濡れるのも構わずじっと公園建設予定地を見つめる場面だろう。その志村さんに駆け寄り、懇願の表情で傘を差し掛けたのが菅井きんさんだった。

また一人、日本映画黄金期の証人を失った。

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