「海賊とよばれた男」とVFXの嘘っぽさ




日本テレビで放送された山崎貴監督『海賊とよばれた男』を録画して見てみたが、予想通りのつまらなさだった。

出光佐三という立志伝中の人物をモデルにした、型通りで面白みがない映画だ。なんの工夫もないのに1人の男の生涯を2時間で描こうとするから、こんなつまらない映画になってしまう。「日章丸事件」だけに絞って描いた方が、よっぽど面白くなったと思うのだが。

まあこの映画の内容はどうでもよく、触れたいのはVFX(視覚効果)技術の使い方だ。

真珠湾攻撃を題材にした2001年公開のマイケル・ベイ監督『パール・ハーバー』は安っぽい人間ドラマと、既視感だらけのCGが不評に終わった作品だ。この映画の戦闘シーンにはCGが多様されているが、落下してゆく爆弾視点のシーンがあるのを見てクリント・イーストウッドは呆れてしまったそうだ。この映画の軽さを象徴するようなシーンだが、CGクリエイターに任せすぎるとこんなお遊び馬鹿シーンを作ってしまうという悪い例である。

『海賊とよばれた男』の冒頭も爆撃機から投下される焼夷弾を、意思があるかのように描いたシーンがある。その直後、空襲で炎と煙に包まれる東京の街もCGで描かれる。このシーンを見て凄いとか、リアルだとか観客は感じるのだろうか。

自分は、これ見よがしのCGシーンに違和感を感じてしまうし、あり得ない視点の映像にリアルさも感じない。実際の火災を撮影したものを見ても、VFXで作られた火災シーンとは明らかに違う。

VFX撮影の第一人者山崎貴監督に対しても、作り物がお上手だね、みんなで頑張ったね位は言ってもよいが、クリエイティブな監督だとはまったく思わない。お得意のVFX技術を使いすぎて、映画を嘘っぽくしているとしか感じないのだが。

ファンタジー映画やSF映画ならVFXを多用しても違和感がないが、そうでなければCG技術は、あくまで補完のための道具と考えるべきだろう。たとえ派手なアクション映画であっても『ダークナイト』や最近の007シリーズのように極力実写で撮影した方が緊迫感がある映像になると思う。

実写指向であるクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』は作品的にはいまいちだったが、戦闘機や輸送船など実物や大型模型を使って撮影しており本物のリアルさと迫力を感じたものだ。

ハリウッド映画ほどの体力がない日本映画はVFXに頼りがちなってしまうのかもしれないが、あまりCGを使うのも考えものだ。CGはよく出来たアニメに過ぎず、本物にはかなわない。VFXが前面に出過ぎて、人物やストーリーが嘘くさく見えてしまうとしたら本末転倒だろう。

これ見よがしのCG映像が見たいのなら、PVとかで楽しめばいい。映画というのは何を描くものなのか、今一度考えてみる必要があるだろう。

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