「砕かれたハリルホジッチ・プラン」

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『砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか?』はワールドカップ直以前で日本代表監督を解任されたハリルホジッチについて、戦術を中心に彼の実績を評価しようとする本である。出版はWカップ直前の5月。著者は当初ハリルの解任など予想しておらず、あわてて書き足したことが窺える内容である。

この本では多くのページをハリルの指揮した試合の解説に割き、図解入りの分析で彼がいかに優れた戦術家であったか証明しようとしている。そんな優秀な監督が解任されたことには批判的な論調で、彼を解任したサッカー協会を批判しそのビジョンの無さを問題にしている。

まあ日本サッカー協会にビジョンが無いと言うのはその通りかも知れないが、戦術に優れていたからと言ってハリルが最高の監督だったとは言えない。いや、優秀な監督だったのかも知れないが、少なくとも日本代表との相性は良くなかったと思う。

だいだい戦術で勝てるなら、レーブ監督率いるドイツ代表も今回のWカップG/Lで敗退などしなかっただろう。ドイツ代表は選手も実績も世界トップクラスのチームで、レーブ監督も優れた戦術家として知られている。それがG/Lであっさり敗退したのは、中心選手のエジルの問題などでチームのまとまりを欠いてしまったからだ。

戦術は大事かも知れないがそれを実行するのは選手たちで、チームがまとまらないと勝てる試合も勝てないのだ。選手の発言に敏感に反応し個人批判をしたり、強権で押さえつけてしまうハリルのやり方は選手たちを萎縮させていたと言えるだろう。その結果ハリルは選手たちの信頼を失い、選手たちも疑心暗鬼の状態でプレーをせざるを得なくなった。

ハリルの解任理由には“選手とのコミュニケーション不足”が挙げられていた。ハリルはその解任理由が不服だったようで、日本サッカー協会を裁判にまで訴えている。おそらく協会が考えるコミュニケーションと、ハリルが考えるそれには見解の相違があるようだ。だがやはり選手にしてみれば、意思疎通が図れていたとは思えない状態だったのだろう。

この本の主張するところではコミュニケーション不足は選手との間にあったのではなく、サッカー協会とハリルとの間にあったとしている。つまり、協会の方にハリルをサポートする努力が足りなかったと言う理屈だ。だが例えそうだったとしても、ハリルのやり方のまずさや認識不足は否定出来ない。

例えば日韓Wカップ時のトルシエ監督だが、彼は自己中心でエキセントリックな性格から協会との軋轢も多く解任論も絶えなかった人物である。だが彼は任期を全うし、Wカップ本番の指揮を執った。要所要所で実績を残したのと、彼の戦術がそれなりに選手の信頼を得ていたのだ。まあ人間的には好かれていなかったかも知れないが、トルシエは選手を動かすマネジメント力を持っていた。そして、自分の立ち位置をしっかりわきまえた策士でもあったのだ。

ハリルにはそれが無かった。ハリルはしっかりとした信念を持ち、多くの時間を代表監督としての務めに割いた仕事熱心な男だ。だがマネジメント力は低かったし、真っ直ぐ過ぎて衝突を繰り返していた。自分のやり方を押しつけるだけで、日本人の良さを活かそうとしないやり方も問題だった。彼の唱える『デュエル』は大切なことかも知れないが、それに拘るあまり日本人の良さを消してしまっていたと思う。

ハリルホジッチ監督でWカップで臨んでも、おそらく結果は出なかっただろう。後任に選ばれた西野監督が最良の選択だったかどうかは分からないが、少なくともハリルの解任で選手たちの士気が上がり結束したのは確かだ。ハリルの解任なしでは、コロンビア戦の勝利もなかっただろう。

だからと言ってハリルが全部間違いというわけではなく、彼の戦術が日本代表の新しい要素として残ることを期待したい。ハリルはブラジルWカップでもアルジェリア代表を率いて結果を残したし、日本代表監督解任後就任したリーグ・アンのFCナントでもチームを立て直している。ハリルはやっぱり優秀な監督なのだ。ただ、日本とは相性が悪かっただけと言うところだろう。

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