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デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」

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ハリウッドの若き才人、デイミアン・チャゼル

人類で初めて月に降り立った宇宙船アポロ11号の船長、ニール・アームストロングを主役にした映画『ファーストマン』の日本公開が今週から始まっている。この映画は己の使命を果たそうとするアームストロングの挑戦と苦闘を描いているが、LEDスクリーンを使った臨場感のある宇宙の映像が話題となっている。

監督はハリウッドの若き才人、デイミアン・チャゼルで、主演は『ブレードランナー2049』など最近の活躍が目覚ましいライアン・ゴズリング。

この二人のコンビと言えば、2016年に公開され多くの映画賞を獲得した『ラ・ラ・ランド』だが、『ファーストマン』公開に併せて日テレ地上波で放送されていた。

男女のほろ苦い恋愛を描き出すミュージカル

映画の内容は、ショウビジネスの街ロサンゼルスで夢を持つ男女が出会い、やがて惹かれ合うという恋愛ミュージカルだ。ジャズピアニストのセブ役にゴズリング。ゴズリングはこの役を演じるに当たり3ヶ月ピアノのレッスンをし、映画でも吹き替えなしで演奏している

女優を目指すミア役を演じるのが『アメイジング・スパイダーマン』などでおなじみのエマ・ストーン。この作品でアカデミー主演女優賞を獲ったエマ・ストーンは、美人というよりファニー・フェイスと呼ばれるタイプだろう。

でもあの顔の造作が大きいのは、返って劇場スクリーンではよく映える。彼女は歴史劇のコスチュームも似合いそうで、スケールの大きさを感じる実力派女優だ。二人はこの映画で3本目の共演となるそうだ。

設定は現代だが全体的にレトロな雰囲気で、60年代のロマンチックな趣を醸し出している。夢を追う二人は一緒の時間を過ごすが、やがて現実の前にすれ違いが始まる。それでも壁を乗り越え二人は結ばれるかに思えたが、場面が一転すると別々の人生を歩むという甘辛い結末が待っていた。

ハイウェイの渋滞に遭遇したミアは、夫と共にゼブの店へ導かれる。そして思いがけず再会した二人に、もう一つの幻想的な人生が繰り広げられるのだ。だがそれは夢を叶えた今の生活が有ってこそ、許された空想世界かも知れない。だから現実を知る二人は、ただ頷くだけで解り合えるのだろう。

ストーリーはシンプルだが、巧みな構成で男女のほろ苦い恋愛を描き出している。大胆な省略を用いながら映像で語らせているので、セリフで説明されなくても分かるし深みもある。

人生の夢と現実

踊りの場面もハイウェイを使ったダイナミックなシーンからロマンチック・エレガント・幻想的にと描き分けており、監督のミュージカルへの拘りが感じられるものだ。ただ内容の渋さから、ミュージカルとしての楽しさや爽快感はもの足りないかな。

チャゼル監督は高校時代、ミュージシャンを目指してジャズドラムに打ち込んでいた。だが厳しい指導を受けるうちに才能の限界を悟り、ミュージシャンを諦めるという挫折を味わっている。

その経験をストレートに反映し作られた映画が、出世作『セッション』だ。『セッション』はジャズドラマーとして成功を目指す若者が厳格な音楽教師にスパルタ指導を受け、挫折しながら機会を得てリベンジを果たす姿が描かれる物語だ。

『ラ・ラ・ランド』の主役二人にも、チャゼルの思いが少なからず投影されている。音楽で身を立てようとするセブと、映画の世界で成功したいと願うミア。いつか道は開けるとしても、そのために諦めなければいけない現実もあるのだ。

最新作『ファーストマン』もアームストロングが人類初の偉業を果たしながら、家族のあり方に苦悩する人物として描かれる。人生の夢と現実・挑戦と挫折を描くことが、チャゼルの映画を貫く主題となっているようだ。

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