「このくにのサッカー」賀川浩 対談集

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『このくにのサッカー』は御年94歳、現役最年長のサッカーライター賀川浩さんによる対談集である。この本で賀川さんと対談したのは、岡田武史・川淵三郎・釜本邦茂・澤穂希・セルジオ越後・佐々木則夫・岡野俊一郎・デッドマール・クラマーなど日本サッカー界に大きな功績を残した人たちだ。

日本サッカーの歴史を見続けてきた賀川さんが、日本サッカーを知る人々に問いかける内容は非常に興味深い。これまでの日本サッカーを振り返るだけではなく、これからの日本サッカーのあり方にも大きな示唆を与えてくれる一冊だ。

対談の1人目には、元日本代表監督の岡田武史さんが登場する。二人の出会いはかなり古く、岡田さんがまだ大阪の中学生だった頃にさかのぼるそうだ。当時の岡田さんはメキシコ五輪の影響でサッカーに熱中し、ドイツに行ってプロになりたいと親を困らせていたそうだ。その時父親に相談され、岡田さんの説得に当たったのが産経新聞スポーツ記者の賀川さんだ。そういった因縁もあり、対談集の一人目に選ばれたようだ。

岡田さんは選手としてドイツ行きの夢は叶わなかったが、のちに古河電工のコーチ時代にドイツ留学をしている。このドイツでプロフェッショナルとしての厳しさを学んだ岡田さんは、Jリーグが始まった日本で指導者としての道を歩み始めたのだ。

岡田さんは日本代表やJリーグクラブチームで指導者としての経験が豊富だが、2012年には中国のクラブチームでも監督を務めている。この時に岡田さんが経験した、中国サッカー事情が興味深い。

中国は2000年代初めから国家を挙げてサッカー代表チームの強化を図っているが、いまだWカップ出場は1回だけと成果は現われていない。あれだけの人口がいて資金が豊富なクラブチームがあり、ワールドレベルの選手や監督を多く呼び寄せているにもかかわらずである。

元来、中国人は4人以上のチームスポーツで成績を残せていないようだ。中国人は歴史的に家族的繋がりを最重要視し、その外にいる人間とは協調する気持ちが薄いらしい。だからチームメイトであっても「こいつは自分の足を引っ張るのではないか」と疑心暗鬼にプレーする傾向があるようだ。

そのため勝負の結果にも淡泊で、自分のミスで負けても認めることがないのだそうだ。あのクラマーでさえ中国人の指導には苦労したのか、賀川さんに愚痴をこぼしていたそうだ。川淵三郎さんとの対談でも、中国のようなエリート選抜方式の強化では代表チームは強くならないという発言がある。チームスポーツは、底辺の広がりなくしてトップチームに伸びが生まれないからだ。

だがそれでも真摯に訴え続ければ、中国人にも伝わるものがあるらしい。岡田さんはオーナーを務めている今治FCを通じて、今でも中国の選手に指導を行なっているそうだ。岡田さんのその熱心な指導ぶりに、中国へ行けば彼の許に選手が寄ってくるらしい。グローバルな視点を持つ岡田さんらしいエピソードである。

セルジオ越後との対談では、当時まだ日本代表監督だったハリルホジッチのサッカーに触れている。セルジオ越後氏は格下相手でも苦戦するハリルジャパンの戦いを、早さ優先でリズムがワンパターンになっていると断じている。つまりハリルのせかす様な戦術で、選手にゆとりがなくなっているという分析だ。普段セルジオ越後の評論は聞き流すことが多いのだが、ハリルへの評価はほぼ同感だ。

佐々木則夫さんとの対談では、女子サッカーの問題点に言及している。なでしこジャパンはWカップで優勝を果たし、オリンピックでも銀メダルを獲得した。そのおかげで知名度は上がったが、女子サッカーに対する環境はまだ厳しいものがあるそうだ。Jリーグ下部組織のような底辺の広がりはまだないし、予算もそれほど多くはない。日本がWカップの賜杯を奪還するためには、まだまだ課題は多そうだ。。

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