アナザーストーリーズ「犬神家の一族~・・・」




26日にBSプレミアムで、アナザーストーリーズ『犬神家の一族~エンターテインメントの革命児たち~』の放送があった。映画『犬神家の一族』は角川映画第1弾として1976に公開され大ヒット、その後の角川ブームの嚆矢となり日本映画界にも大きな影響を与えた作品である。番組では角川春樹・市川崑・石坂浩二の3人に焦点を当て、この映画の成り立ちが語られている。

この映画は金田一耕助シリーズの同名小説を映画化したものだが、忘れられた作家・横溝正史の原作に目をつけたのが出版界の若手経営者だった角川春樹だ。角川春樹は横溝ブームを生み出すべく映画の利用を思い立ち、自ら制作に乗り出す。彼のやり方はこれまでの慣習に囚われず、出版界・映画界に新しいビジネスモデルを持ち込み風雲児と呼ばれるようになる。

映画を書籍販売の大掛かりな宣伝と捉え「読んでから見るか、見てから読むか」のテレビCMでメディアミックスの先鞭をつけ映画も原作本も大ヒット、地味な出版社だった角川書店をメジャーにする。ハッタリに近い言動で彼への評価は毀誉褒貶するが、少なくとも日本映画界の閉塞感を打破した功績は大きい。

角川作品は、派手さばかりが目立ち内容は薄いと全体的に評価は低いが、市川崑・深作欣二・佐藤純彌といったベテランに大作を撮らせる一方、大林宣彦・相米慎二・森田芳光・根岸吉太郎といった若手・中堅を起用し映画界に新しい風を送っている。82年には『蒲田行進曲』という名作も送り出している。

ただ、大量の前売り券を企業に押しつけるやり方は批判も多く、角川春樹の独善的な経営に反発する者もいた。90年には自ら監督を務め巨費を投じて制作した『天と地と』が大ヒットするが、これ以降角川映画の勢いは下り坂となる。90年代、お家騒動で会社が打撃を受けると、その後春樹社長は麻薬密輸に関連し逮捕される。こうして角川映画は終焉を迎えたのだ。

世を騒がせた跳ねっ返り者が落とし穴に嵌まり沈んでいく様は、現代の目立ちたがりなIT系社長の姿を連想させる。

市川崑監督は論争を呼んだ『東京オリンピック』以来、映画界を離れテレビの仕事をしていた。この『犬神家の一族』は巨匠・市川崑を映画界に復活させた作品でもある。市川監督はこれまで様々なジャンルの映画を手掛けており、ノンポリのスタイリストで映像のプロフェッショナルだ。1日100本のタバコを吸うヘビースモーカーで、抜歯の隙間に挟み燻らせる喫煙姿がトレードマークである。

映像表現に拘る市川は極端な造形も追求し、スケキヨのマスクや湖面に浮かぶ逆さ足などで横溝作品の世界を表現、極上のエンターテインメントを作り出した。この映画を大ヒットさせた市川は旺盛な創作活動を再開、晩年まで大作・意欲作を手掛けていくことになる。

金田一耕助役に選ばれたのが石坂浩二。これまで映画で演じられた金田一探偵はスーツ姿のヒーローとして描かれていたが、石坂には原作イメージの和服で野暮ったい金田一像が求められた。そして生まれたのが、和服でボサボサ頭によれた帽子を被った金田一耕助の姿である。

この金田一は主役と言うより語り部、探偵と言うより観察者である。だがこの映画は横溝作品のおどろおどろしい世界を描くのが肝で、探偵はヒーローではなく説明役なのだ。そのため石坂は演者だけではなく、ナレーターとしての役目も負っている。

石坂浩二は若い頃『ウルトラQ』などのナレーションを担当しており、NHKドキュメンタリー『シルクロード』のナレーターとしても有名だ。つまり石坂のキャスティングには、彼のナレーション能力も見込まれてのことだったのだ。石坂は金田一耕助役を5作品で演じ、これまで映画での印象が薄かった彼を代表する役となった。

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