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ナンシー関・リターンズ

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ナンシー関のテレビコラム

ナンシー関と言えば『テレビ消灯時間』シリーズなどのコラムや消しゴム版画が有名だが、亡くなってもう16年以上になる。彼女のコラムはTV(芸能人)の本質を捉えようとする探究心に溢れ、シニカルな視点からのユニークな語り口が心地よい。その批評は時に辛辣で鋭いものがあるが、それは愛するTVをより味わって貰いたい為まぶしたスパイスだろう。

ナンシー関は、ヤワラちゃん(谷亮子)の政治家転身を言い当てたり、猿岩石時代の有吉に潜む闇を見抜いたりと、目の確かさがファンからよく言及される。そうした彼女の目の確かさは、ディティールを捉える感覚の鋭さから来ており、独特の説得力で読者(視聴者)の共感を呼ぶのだ。

ナンシー関のコラムや版画は今でも人気が高く、亡くなってからも幾つかの本が出版されている。今回その中から『ナンシー関 リターンズ』『ナンシー関の迷言・予言』『お宝発掘!ナンシー関』の3冊を読んでみた。

ユニークな着眼点と独自の切り口

この3冊に掲載されていたのは大体80年代終わりから00年代初め頃のコラムだが、初期の頃は歴史的偉人も題材として扱っている。偉人については常識程度の知識を持っているだけで、特に見識があるわけではないが着眼点がユニークで独自の切り口が面白い。

そこからTV視聴日誌へと写っていくわけだが、初期のTV評は結構ストレートでかなりの毒舌ぶりだ。例えば『世界まる見え!特捜部』の楠田枝里子を嫌だとか、『TVタックル』石井苗子が嫌いだから降りてくれないかとか、かなり手厳しい。

大橋巨泉の番組『ギミア・ぶれいく』の中で放送されていたアニメ『笑ゥせぇるすまん』への評も辛辣だ。たいして面白く無いのに、あの程度のものを持ち上げちゃうのは、視聴者にブラックユーモアへの免疫がないからだろうと断言している。まったく同感だけど。

懐かしのあの人たち

初期のコラムはこのようにストレートだが、消しゴム版画を含め表現はだんだん洗練されていく。『サンデーモーニング』の関口宏を“それにしても良識しか口にしない”とか『3時のあなた』の蓮舫(タレント時代)を“社会派バカ”とか、森繁久彌の“重鎮らしい所作”はボケ老人の動きと共通するとかの評は、適当かつ皮肉が効いていて思わずニヤリとさせてしまう。

ナンシー関の好きなもの、番組なら『大食い選手権』とプロレス、タレントなら内藤陳と白木みのるだ。この辺りに、ナンシーの特異な存在に対する偏愛というものを感じる。特異な存在と言えば霊能力者・宜保愛子への言及も面白い。霊能力者と言えば胡散臭さがつきまとうものだが、宜保愛子はあの素人顔でそこをクリアしているという分析は鋭い。

あとこれらのコラムを読んでいくと、江畑謙介・坪内ミキコ・呂明賜・篠沢秀夫・宅八郎・塩田丸男・呉智英・前田忠明といった忘れかけていた人たちの名前に出会えるのも楽しい。ナンシー関のTVに対する興味はバラエティーだけでなく、スポーツから政治討論までと多岐に渡っているのだ。

早すぎた退場

その他、芸人が番組で使うメガホンとか反町隆史が着用するパイロットシャツとか、ディティールに拘る考察も面白い。両手握手を始めたアイドルは松田聖子だという指摘も興味深かった。それから島田紳助や中島知子などの怪さも漏れなく拾っており、そのレーダー感度は抜群だ。

何年か前、ナンシー関の半生を扱ったドラマをNHKで放送していた。その時ナンシー関を演じたのは無名時代の『メイプル超合金』安藤なつだったが、本人とうり二つだった。ショートピースを1日20~30本吸うヘビースモーカーのうえ食生活も気ままで、短命に終わったのは残念だが定めだったのだろう。

だが彼女が今も生きていたら、現在のSNSの隆盛や自主規制の行き過ぎたTV界についてどんなふうに書いただろうか。そして、今やTV界を席巻する新勢力・有吉弘行や坂上忍、マツコ・デラックスたちへの評価も知りたかったところだ。

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