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ティム・バートン「バットマン」

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バットマンキャラの変遷

バットマンが誕生したのは1939年、探偵・刑事の活躍をテーマとしたコミック誌においてである。当初クライム・ヒーロだったバットマンは、様々なクリエイターによってそのキャラも変化していく。

そして60年代にはTVシリーズとなり、ジョーカーやペンギンなどファニーでフィギュアっぽいヴィラン(悪役)も登場、ポップアートに彩られたキッチュなヒーローとなる。

こうして一時陽性化したバットマンだが、70年代にはシリアス路線への転換が図られる。それをさらに探求したのが80年代半ばに起きたグラフィクノベル革命で、フランク・ミューラー作画の『ダークナイト・リターンズ』ではバットマン世界を再構築、ヒーローの存在意義を問うダークでディープな物語となった。

ティム・バートンの世界

その新たなるバットマンの物語を映画化すべく、監督に起用されたのがアニメーター出身のティム・バートンだった。バートンの描く奇妙なカルト感が、新生バットマンのダークな世界にマッチしていたのだ。

プロデューサーの強力な推薦により、ヒーローのバットマンことブルース・ウェイン役はマイケル・キートンが演じることになった。だがコメディアンの印象が強いキートンにファンが反発、ワーナーには5万通に上る抗議文が寄せられた。しかしキートンはその不安を払拭、ナイーブなブルースと冷徹なバットマンの二面性を見事に演じて見せた。

バートンはスタジオに大掛かりなゴッサムシティのセットを作り、アールデコ調のレトロな背景を構築した。バットマンのコスチュームも筋肉体型を模した黒のラバースーツを使用、それまでのポップイメージを一新するビジュアルに優れたヒーローとなる。世界観を投影したアーティスティックな造形のバットモービルも、斬新でインパクトの強いものとなった。

ゴッサムシティの闇夜で跋扈する極彩色の悪役 “ジョーカー” は狂気を体現する道化で、黒一色の“バットマン”は狂気を内包する闇の騎士(ダークナイト)である。つまりこの『バットマン』は表裏一体となる二人が、宿命のもと戦う愛憎の物語なのである。狂気を怪演したジャック・ニコルソンは、実質この映画の主役だった。

表裏一体のヒーローとヴィラン

バートン独特のセンスと美的感覚で新しいヒーロー映画となった『バットマン』は大ヒットし、92年には続編となる『バットマン・リターンズ』が製作される。この続編はバートン色をより濃く投影したもので、作品は異形への偏愛に満ちている。

悪役ペンギンは、生まれつきの醜い容貌から両親に捨てられたという不幸な生い立ちを持つ。ギャング団のボスとなった彼は策を弄し市民を騙して、ゴッサムシティの支配を企むヴィランとなる。愛情を知らずに育ったペンギンは、一方的に愛を求める歪んだ性質を持ち、バートンの屈折した世界の象徴となっている。

内気で冴えない会社秘書セリーナは、上司の秘密を知り窓から突き落とされる。だが彼女は猫の魔術で蘇り、ツギハギだらけの衣装で復讐を誓うキャットウーマンとなる。このキャットウーマンも、内気で友達のいなかったバートンの孤独な少年時代を写し出すキャラクターだ。

バートンのトラウマを反映した二人のヴィランは、バットマンの葛藤を投影する存在でもある。孤独な二人、バットマンとキャットウーマンは互いに惹かれ合う。だが、仮面を必要とするキャットウーマンは、自らバットマンに決別を宣言する。

ペンギンはバットマンに向かって「お前は嫉妬しているんだ。お前は仮面をつけなきゃコウモリにはなれないが、俺は生まれながらの鳥人間だ」と嗤う。奇形に生まれ愛を知らない男の悲痛な叫びだが、裏返しの存在のバットマンにもその哀しみは跳ね返ってくるのだ。

バットマンシリーズの終了

アメコミ世界の異形なキャラクターを通して人間の孤独や悲哀・屈折を描いたこの作品は、ダークで魅惑的な美術もあいまってヒーロー映画の傑作となった。

だが3作目の『バットマン・フォーエバー』から監督はジュエル・シューマカーに引き継がれ、バットマンもヴァル・キルマーに交替する。するとバットマンの闇は薄れ、よりポップさが際立つことになる。

そして4作目『バットマン&ロビン』に至って闇は消え、支離滅裂な映画と酷評されてシリーズは一旦終了したのだ。

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