「麗しのサブリナ」と「昼下がりの情事」

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『麗しのサブリナ』のオードリー

『ローマの休日』で一躍人気者となったオードリー・ヘプバーンだが、続いて出演した54年の『麗しのサブリナ』でもその魅力を発揮する。監督はビリー・ワイルダー、共演にハンフリー・ボガートとウィリアム・ホールデン。

オードリーは『ローマの休日』の王女役とは打って変わり、大富豪お抱え運転手の娘サブリナとして登場する。サブリナは大富豪の次男デイヴィッド(ウィリアム・ホールデン)に密かに恋をする。だが遊び人のライナスは垢抜けない小娘のサブリナなど眼中になく、社交界のお嬢様に夢中だった。

失恋し傷心のサブリナは料理修業のためパリへ行くが、2年間の生活でレディの洗練さを身に付ける。という前半のストーリーだが、垢抜けない小娘という設定でも野暮なワンピースにポニーテールという姿が却って愛らしい。

ジバンシィの花柄ドレス

サブリナは見違えるような姿で帰国するが、メイクやファッションだけでなく態度や話し方も大人の女性となり、たちまちデイヴィッドを虜にする。そして2年前は、木に登って外から眺めるしか無かったパーティーに誘われるのだ。パーティーのシーンではサブリナがジバンシィデザインの花柄のドレスで現われ、痩身のオードリーならではのエレガントさで周囲を魅了する。

またこの映画でオードリーが着用した細身で丈の短いズボンは、サブリナパンツと呼ばれ世界で大流行している。この映画で衣装デザインを担当したのはイーディス・ヘッド。映画界のトップデザイナーでそのシンプルな衣装はオードリーのスタイルを際立たせている。

サブリナは結局デイヴィッドではなく、兄のライナスと結ばれることになる。その兄が渋さが持ち味のハンフリー・ボガートなのも、コメディの名手ワイルダーならではの変化球だ。ちなみにこの役は最初ケイリー・グラントがオファーされていたようだが、彼ではお洒落すぎて面白味は薄れていただろう。

“おじさまキラー”

『麗しのサブリナ』の3年後、ワイルダーは再びオードリーを起用し『昼下がりの情事』を撮った。共演はゲイリー・クーパーとモーリス・シュバリエ。

お話は、父親(シュバリエ)とパリの探偵事務所で二人暮らしをする純真な音大生アリアーヌが、世界で浮き名を流す富豪フラナガンに惹かれ、謎の女を演じようとして始まるロマンチック・コメディである。

この映画からワイルダーとコンビを組むことになったI・A・L・ダイアモンドの脚本はお洒落で軽快、流れるような筋運びと小道具の使い方が絶妙だ。この時27歳のオードリーも、フラナガンの前で背伸びする乙女を違和感なく演じ、その真っ直ぐな表情には心奪われてしまう。

フラナガンを演じるゲイリー・クーパーはこの時56歳で、オードリーとは29歳差だ。もっともオードリーはベテラン相手との共演が多く、グレゴリー・ペックとは14歳、『マイ・フェア・レディ』のレックス・ハリソンとは21歳、『戦争と平和』のヘンリー・フォンダとは25歳、『シャレード』のケイリー・グラントとは27歳、ボガートに至っては30歳離れている。

このことからオードリーは “おじさまキラー” と呼ばれたりするが、経験豊富な俳優を前に可憐に演じるのが、妖精の魅力を引き出しているのだろう。

アリアーヌとフラナガンのすれ違い

若く好奇心旺盛なアリアーヌは父親への依頼を盗み聞きし、フラナガン氏に降りかかろうとする危機を知る。そこからアリアーヌとフラナガンが出会うことになり、正体不明の女学生とプレイボーイの物語が進んでいく。ここから終盤までの流れに無理がないどころか、一ひねり二ひねり加えた脚本の巧みさには唸ってしまう。

背伸びしてフラナガンの気を引こうとするアリアーヌは健気で、素の状態で揺れる乙女心がいじらしい。要所要所で演奏される『魅惑のワルツ』は甘く切ないが、楽団のユーモラスさが心落ち着かせる。随所で挟まれるギャグも品がよく、ストーリーに潤いを与えている。

アリアーヌはフラナガンを嫉妬させようと、父の探偵ファイルで盗み見た恋愛遍歴を並べ立てる。彼女の虜になったフラナガンは堪らず、謎の女性の身元を調査しようとする。一方、アリアーヌが恋をしていることに気付いた父親は問いただすが、娘は曖昧な返事で洗面所に逃げ込む。その時ブザーが鳴り、父親の前に現われたのがフラナガンだ。

この時、髪を洗っているアリアーヌとフラナガンは壁一枚を隔てたすぐ近くにいるのに、互いに気が付かないというすれ違いが起きる。

魅惑の『ファッシネーション』

父親はフラナガンから謎の女性の恋愛遍歴を説明され、どこかで聞いたような話だと自分のファイルを探った。そしてその時、娘がファイルを盗み見していたことを悟る。その後依頼を終えたフラナガンが去ると、タオルで頭を拭くアリアーヌが父親の前に姿を見せた。

三人それぞれの心理が交錯し観客をドギマギさせながら、巧みにストーリーを転換してみせた見事な場面だ。娘思いの父親で優秀な探偵役シュバリエの渋い演技も素晴らしい。結局父親はフラナガンに謎の女の正体を明かし、娘と別れて欲しいと頼む。フラナガンはそれを受け入れ、プレイボーイのまま自ら身を引く事を決める。

ラストは駅での見送りのシーン。悲しみを抑え、最後まで正体を隠そうとするアリアーヌ。そして、彼女を傷つけまいと紳士的に対応するフラナガン。やがて列車は動き出し、アリアーヌは強がりを言いながら、去って行くフラナガンに追いすがろうとする。

そして訪れた最後の場面、二人のいなくなった駅のプラットホームには、何故か『ファッシネーション』を奏でる楽団の姿がありましたとさ。めでたし、めでたし。

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