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マーベルの逆襲「アベンジャーズ」シリーズ

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〈2019年4月28日の記事〉
【マーベル・シネマティック・ユニバース】の勢い

26日に公開を迎えた『アベンジャーズ / エンドゲーム』は、マーベルスタジオの【マーベル・シネマティック・ユニバース】(MCU)22本目の映画で、『アベンジャーズ』シリーズの集大成となる作品だ。

『エンドゲーム』にはロバート・ダウニー・Jrらアベンジャーズ・メンバー(声の出演には、ヴィン・ディーゼルやブラッドリー・クーパーも)の俳優に加え、ロバート・レッドフォード、マイケル・ダグラス、ウイリアム・ハート、ナタリー・ポートマン、ミッシェル・ファイファーなど、これまでのMCU作品に登場した大物俳優も顔を見せ、記念的な作品となっている。(真田広之も登場)

昨年亡くなったマーベルの功労者、スタン・リーのカメオ出演も『エンドゲーム』が最後となり、シリーズの中心だった“アイアンマン”ダウニー・Jrと“キャプテン・“アメリカ”クリス・エバンスも本作品で退くことになった。だが、これから新しい『アベンジャーズ』シリーズも予定されており、マーベルスタジオの勢いはまだまだ続きそうだ。

マーベルの低迷

これまでたくさんのアメコミヒーロを生み出してきたマーベル・コミックだが、映画作品での成功という意味では、ライバルのDCコミックス(スーパーマン、バットマンなど)に大きく後れを取っていた。

マーベルは80年代後半から経営が悪化、保有していたキャラクター権利の切り売りを始める。86年にマーベルのコミック漫画を映画化した、ジョージ・ルーカス製作『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』が作られるが、不評で大コケしてしまう。

89年の『パニッシャー』、90年の『キャプテン・アメリカ/帝国の野望』といったマーベルヒーローの映画が作られるが評価は低く、94年のロジャー・コーマン監督『ザ・ファンタスティック・フォー』に至っては、140万ドルの低予算で作られたやる気の無い作品で、公開どころかビデオ化さえされなかった。

マーベルコミックは97年に倒産した後、98年にマーベル・エンターテインメントを設立して再出発した。そうするとようやく98年に『ブレイド』がヒット、00年の『XーMEN』や02年の『スパイダーマン』は大ヒットし、05年の『ファンタスティック・フォー』もそれなりに話題となった。

だがこれらのヒット作が、苦境のマーベルを救うことはなかった。様々な権利を切り売りしていたマーベルが得たのは、ほんのお裾分け程度の利益だった。

映画『アイアンマン』製作へ

こういった状況に、当時マーベルの役員(COO)だったデヴィッド・マゼルは、大胆な立て直しプランを会社に提案した。それは、投資銀行メリルリンチから5億2千5百万ドルの融資を受け、権利を買い戻して7年間で10本の映画を製作しようという計画だった。

その作品ラインナップに挙げられたのが、キャプテン・アメリカ、アントマン、ドクター・ストレンジ、ブラック・パンサー、そして“アベンジャーズ”などである。

担保にするのはマーベル全キャラクターの権利(ただし、人気ヒーローの権利は売り払われていて無い)。大きな賭だったが、マーベルのCEOアイク・バールムッターはゴーサインを出す。07年、マゼルがマーベルスタジオの会長に任命されると“アイアンマン”の権利が買い戻され、プランは動き出したのだ。

映画『アイアンマン』の製作責任者となったのが、ケヴィン・ファイギ。『XーMEN』や『スパイダーマン』でも製作に加わり、豊富な知識からマーベル・コミックの百科事典と言われた男である。マーベル世界を知り尽くしたこの男の作品ポリシーは単純明快、原作に書かれている物語をそのまま映画にしようということだった。

製作にあたり、ファイギが監督に選んだのがジョン・ファヴァロー。有名監督ではなかったが、ファイギは彼の作ったファンタジー映画を見て、腕の確かさと可能性を見いだしたのだ。そのファブローは、主役のトニー・スターク役にロバート・ダウニー・Jrの起用を決める。

ダウニー・Jrは、92年の『チャーリー』で演技を評価されいくつかの賞を獲得、実力派として知られた俳優だった。その一方で彼は子供の頃から薬物を常用し、何度も逮捕されるなど問題を起こしていた。中毒にも苦しんで仕事に大きな支障をきたし、数年前にクスリを絶ってようやく復調の途上にあったのだ。

そのためマーベル社内では、ダウニー・Jrが主役を演じることに大きな不安の声が挙がっていた。だがファヴァロー監督はダウニー・Jrの起用に拘る。彼がオーディションで見せた演技は圧倒的で、蔭があり皮肉っぽいが、ナイーブで軽薄さも持つという持ち味は、トニー・スタークの役にぴったりだったのだ。

“マーベル・ユニバース” の世界

08年『アイアンマン』が公開されると大ヒットを記録した。シンプルだがテンポの良いストーリー、CGの迫力と斬新なメカ、そしてキャスティングの魅力と、この映画はアメコミ作品として水準の高いものだった。そして『アイアンマン』の成功で、製作責任者ファイギのMCU構想が現実味を帯びてくる。

マーベル・コミックには、大勢のヒーローが同一世界に存在し、クロスオーバーする “マーベル・ユニバース” という概念があった。ファイギはこの世界観を映画作品でも実現させようと大きな構想を立て、ヒーローが集結する映画『アベンジャーズ』の製作を目指した。

そして『インクレディブル・ハルク』『マイティー・ソー』『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』といった個別のヒーロー映画を計画する。

09年にマーベルを参加に収めたウォルト・ディズニー・カンパニーは、まず『アベンジャーズ』を先に作るべきだと意見してきた。しかし各ヒーローの個性と世界観があっての『アベンジャーズ』で、物語を積み重ねてこそ、ヒーロー集結は一大イベントとなる。それが、長年築いてきたマーベルの方法論なのだ。

こうして計画通り映画は作られ、監督や脚本の異なる各作品クロスオーバー設定の統一が図られた。それでも各作品が単独で楽しめる映画になったのは、ファイギの手腕によるところが大きかった。こうして作品が出揃い、準備が整うと『アベンジャーズ』の製作が始まる。監督にはコミックファンだった脚本家の、ジョス・ウェドンが起用される。

何人ものヒーローが集結する『アベンジャーズ』は、下手をすればキャラが大渋滞を起こすか、没個性になりかねない難しい題材だった。だが、監督のウェドンは各ヒーローのキャラを立て、それぞれの見せ場を作りながらも、統一感のある集団戦を描くことに成功、圧倒的なマーベル世界を出現させたのだ。

空前の人気シリーズ

そして12年公開の『アベンジャーズ』はメガヒット、興行収入は15億ドルにも及び、マーベルに途方もない利益をもたらした。

MCU作品はルッソ兄弟が監督した最新作『アベンジャーズ/エンドゲーム』で第三段階(フェイズ3)を終え、また新たなステージに入る。しかしここに至るまでの22作品が、いずれも水準の高い娯楽作になっているのは驚異的で、まさに空前絶後の人気シリーズだと言えるだろう。

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