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「007 ユア・アイズ・オンリー」とムーア・ボンド

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地に足が着いたリアルストーリー 『ユア・アイズ・オンリー』

『ムーン・レイカー』はヒットしたものの、宇宙に飛び出したスペクタクル路線が大味で散漫になった反省から、地に足の着いたストーリー重視の物語が作られた。それが81年の『ユア・アイズ・オンリー』だ。

監督は、007シリーズの第2班監督や編集を担当してきたジョン・グレン。両親を殺され、ボウガンを持って復讐に燃える女性メリナ役にキャロル・ブーケ、ボンドを助けるギリシャ人をトポルが演じている。

『ユア・アイズ・オンリー』はイアン・フレミングのシリーズ短編『読後焼却すべし(For Your Eyes Only)』と『危険』を原作に、当時の世界情勢を反映した内容となった。79年にソ連のアフガン侵攻が起こり、それに反発した西側諸国が80年のモスクワ五輪をボイコット、一気に東西の緊張が高まっていた。映画の中にはサッツチャーそっくりな女性首相も登場する。

物語はATAC(自動ミサイル誘導装置)を巡る英ソの駆け引きが描かれ、ボンドも現実的な問題に取り組むスパイとして活躍する。

生身のアクションだけで勝負

今回の作品は、巨大なセットや最新のテクノロ装備といったものを抑え気味にして、ハードなアクションが随所に展開した。『私を愛したスパイ』で活躍したボンドカー、ロータスエスプリも乗り込む前に爆破され、代わりにメリナの小型車シトロエン2CVによるスリル満点のカーチェイスが繰り広げられる。

ロボットのようなダイビングスーツ “ジム” が登場するが、これは実際に使われている装備だ。この “ジム” とボンドが戦うシーンは、『サンダーボール作戦』以来の迫力ある海中アクションシーンとなっている。このあと敵に捕まったボンドとメリナがロープで縛られ、珊瑚礁を引きずり回されるという酷い目に遭わされる。(実際の撮影はスタントマンとフィルム合成)

クライマックスは世界遺産メテオラの高い崖と、600年前の修道院で撮影したロック・クライミング。保守的な修道僧の妨害に遭いながら、スタントチームは危険な撮影を敢行、緊張感溢れたクライミングシーンを生み出した。

奇抜な装備やテクノロジーに頼らず、生身のアクションだけで危機を乗り切るボンドの姿は、シリーズの原点とされ高い評価を受ける作品となった。81年公開の映画の中でも、スピルバーグの『レイダース/失われたアーク』に次ぐヒットとなり、興行的にも成功する。

コネリーボンドとの対決 『オクトパシー』

83年の『オクトパシー』はインドを舞台とした作品だ。それは映画の『ガンジー』やテレビドラマなど当時英国で高まっていたインド熱を受けてのものだった。50代半ばに差し掛かっていたロジャー・ムーアはシリーズ降板を宣言していたが、諸事情によりボンド役を続けることになった。

『オクトパシー』は前作に続くハードアクション路線だが題材に目新しいものがなく、インド観光の映画になっている気がしないでもない。小型ジェット機、アクロスターを実際に飛ばしたアクションは愉快だが、全体的に新味には乏しい。

クライマックスの空中ファイトのあと、飛行機が山にぶつかって爆発するシーンがある。当初アクション撮影班は本物の飛行機に爆薬を詰め、300mの崖から落として爆発させようとした。だが爆薬を詰めた飛行機は風に乗り、自力飛行し始めたため、スタッフは大慌てする。

この飛行機は運良く旋回し、近くの峡谷に突っ込んで事なきを得たものの撮影は失敗、改めて模型を使ったスタジオ撮影に切り替えられた。

同時期に『ネバーセイ・ネバーアゲイン』が作られており、ロジャー・ムーアとショーン・コネリーのボンド対決が注目されたが、興行的には『オクトパシー』が上回り本家007シリーズの面目を保つ。

ムーアボンドの最終作 『美しき獲物たち』

85年の『美しき獲物たち』は、フレミングのシリーズ短編『バラと拳銃』の原題からタイトルを借りているが、内容は全く関連がない。監督は引き続きジョン・グレンが務め、陰謀を企てる実業家ゾーリンにクリストファー・ウォーケン、ゾーリンの愛人であり相棒でもあるメイ・デイを、グレイシー・ジョーンズが演じている。

ボンド役のムーアはこの時すでに58歳。見た目も体力も厳しくなっている。もちろん、ほとんどのアクションシーはスタントマンが演じているが、全体的におっとりした感じでムーアのユーモラスさが漂う作品となっている。

すっかりマンネリ化してしまった『美しき獲物たち』の興行収入は落ち込みを見せ、ロジャー・ムーアもこの作品を最後にシリーズを退くことになった。

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