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ピアーズ・ブロスナン「007 ゴールデンアイ」

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4代目ボンド ピアーズ・ブロスナン

『消されたライセンス』のあと版権を巡るゴタゴタが起き、さらに脚本の遅れで制作開始が延びたことで、ティモシー・ダルトンが降板する。そこで新たにジェームズ・ボンドを演じる事になったのが、ピアーズ・ブロスナンである。

ブロスナンは、恋人がボンドガールの一人として出演していた『ユア・アイズ・オンリー』のロケ地を訪れた時から、プロデューサーのブロッコリに将来のボンドだと目をつけられていた。事実、ロジャー・ムーアのあとの4代目ボンド有力候補として彼の名前があがるが、この時は人気TVシリーズの契約に縛られていたため断念する。

ダルトンが降板を表明した94年、TVシリーズの契約を終えたブロスナンが5代目ボンドに選ばれ、公に発表された。ブロスナンも子供時代に『ゴールドフィンガー』を観て以来のシリーズの大ファンで、ようやく念願のボンド役を得ることになったのだ。

シリーズ復活作 『ゴールデンアイ』

そして新ボンドを迎え、95年に制作・公開されたのが『ゴールデンアイ』 監督はマーティン・キャンベル。高齢となったブロッコリの代わりに、娘バーバラが制作に加わっている。ちなみに“ゴールデンアイ”は、原作者イアン・フレミングのジャマイカ別荘の名前であり、MI6時代に使っていた作戦名である。

6年ぶりのシリーズ作品だったが、制作には幾つかの問題があった。91年にソ連が崩壊すると世界の情勢も大きく変化、スパイの活躍の場は狭まっていた。

また80年代後半から、スタローンやシュワルツェネッガー、ブルース・ウイルスなど肉体派スターが激しいアクションで魅せており、冷戦時代の遺物たるボンド映画は古くさい物となりつつあったのだ。

この映画でボンドが対決するのは、国際テロ組織ヤヌス。ゴールデンアイという、旧ソ連が開発した大量破壊兵器で脅しをかける彼らの陰謀を阻止すべく、イギリス諜報部員ボンドが政府の任務を受け活躍するという内容だ

新基軸の数々

設定自体は従来の話とあまり変わらないが、ボンドの新しい上司Mに名女優のジュディ・デンチを配し、これまでボンドの嗜好品程度の扱いだったボンドガールに主体性を持たせ、ストーリーの重要な部分を担わすなど新基軸を打ち出している。

また最新テクノロジーやコンピューターオタクが登場、新たにタイアップとなったBMWやオメガの時計と合わせ新時代シリーズの装いを見せた。

ストーリーも、かつての仲間の裏切りや復讐などのスリラー的展開で、飽きさせない内容となっている。また、最長記録となるダムの上からのバンジージャンプで驚かせたあと、街を破壊しながら繰り広げられる戦車チェイスも観客の度肝を抜くもので、新しいスパイアクション登場を印象づけた。

本物のT-55戦車を使ったチェイスシーンは、一部のスタントや爆発シーンを実際にサンクト・ペテルブルクで撮影したあと、イギリスのスタジオ近くにの実物そっくりの街並み2ブロックを再現し行なわれている。そして最終対決の舞台、アレシボ電波望遠鏡は実物大のセットと巨大模型を使って撮影、スケールの大きなクライマックスとなった。

『ゴールデンアイ』は公開されると大勢の観客の支持を受け、『ムーンレイカ』以来の大ヒットを記録する。こうして一時危機を迎えていた007シリーズは、鮮やかな復活を見せた。

『トゥモロー・ネバー・ダイ』『ワールド・イズ・ノット・イナフ』

96年にシリーズ第1作『ドクター・ノオ』から制作に携わってきたアルバート・R・ブロッコリが死去する。そのあとを引き継いだ娘のバーバラ・ブロッコリが97年に制作したのが『トゥモロー・ネバー・ダイ』だ。メディア王カーヴァーにジョナサン・プライス、中国の女工作員ウェイ・リンを香港のアクション女優、ミシェール・ヨーが演じている。

映画の主な舞台は東南アジア。ヨー演じる格闘技の達人ウェイ・リンは、ボンドと手錠に繋がれながらのアクションで奮闘、ボンドガール以上の役割で映画を盛り上げている。

冒頭に日本人の武器バイヤーが登場するが、彼は東京の地下鉄にテロを仕掛けたという設定で、オウムの地下鉄サリン事件がモチーフになっている人物だ。クライマックスの、沈没したフリゲート艦内で繰り広げられる水中アクションは、ジェームス・キャメロン監督『タイタニック』のあと、同じスタジオのプールで撮影されたものだ。

『トゥモロー・ネバー・ダイ』もヒットし、続けて作られたのが99年の『ワールド・イズ・ノット・イナフ』 80年の『ラ・ブーム』でアイドル的人気を博したソフィー・マルソーが妖艶で悲しい性(さが)を持つ悪女、エレクトラ・キングを好演している。

登場する最新テクノロジー装備は、超高速で水面を滑走するQボートとパラシュート滑空するスノーモービル・パラホークス。またリモコン操作で自走可能なボンドカー、BMW Z8が登場するがなんと森林伐採機のノコギリで真っ二つ、哀れスクラップにされてしまう。

『ワールド・イズ・ノット・イナフ』もヒットし、そのあと21世紀に入って最初に作られた007シリーズが、02年の『ダイ・アナザー・デイ』 オスカー女優のハル・ベリーがボンドカールを演じ、主題歌を歌うマドンナもカメオ出演している。

シリーズの行き詰まり 『ダイ・アナザー・デイ』

『ダイ・アナザー・デイ』はシリーズ開始40周年・第20作目のアニバーサリー作品として作られたが、そのせいか大味な作品となってしまった。本作で不気味な勢力として登場するのが北朝鮮。公開当時、北朝鮮だけでなく韓国の描き方も不適切だと批判を受けている。もし今こんな映画を作ったら、かの国のサイバー攻撃を受けてとんでもないことになるだろう。

ヒゲづらボンドも衝撃的だが、ポリマースキンで姿を消すボンドカーもやり過ぎだ。もはや秘密兵器の一線を越え、イリュージョンにしか見えない。それとDNA交換治療で白人に化けるムーン大佐というのも現実感に乏しい設定だし、東洋人蔑視の臭いがしないでもない。

だが最も酷いのが、パラシュートを使いながらボンドが波乗りで危機を脱するするシーン。稚拙なCGと合成感丸出しの安い映像で作品が台無し、007シリーズの質を落としたとファンの大ヒンシュクを買ってたりしている。

『ダイ・アナザー・デイ』もヒットを記録したものの、一昔前のような物語設定と陳腐さはシリーズの行き詰まりを感じさせた。ブロスナンはハンサムでユーモアがあり、アクションやラブシーンも平均点以上にこなす優等生ボンドだが、それだけに飛び抜けた個性に欠けていた。そこら辺の物足りなさが、4作目で早くもマンネリ化を招いたのかも知れない。

観客は時代に相応しいボンドと、新鮮なボンドの物語を求め始めていたのだ。

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