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アナザーストーリーズ「ロッキー誕生~」

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〈2019年7月3日の記事〉
『ロッキー誕生~負け犬たちの逆転劇~』

今週のアナザーストーリーズは『ロッキー誕生~負け犬たちの逆転劇~』、無名役者時代、底辺の境遇にあったシルベスター・スタローンが、映画『ロッキー』でアメリカンドリームを勝ち取る様子を描いた内容。

『ロッキー』の成功物語は今まで多く語られてきたこともあり、エピソードとしてはあまり目新しいものは無かった。だが『ロッキー』誕生のきっかけとなった、ボクシング・ヘビー級タイトルマッチ『モハメッド・アリ対チャック・ウェプナー』戦のスチール写真や、カメラマンのカウフマンが8ミリで撮っていた『ロッキー』のメイキング映像が見られたのは貴重。

大学を中退し俳優を志したスタローンだが、オーディションに落ち続け、ありつけたのは通行人などのエキストラ同然の役ばかり。この売れない役者時代、スタローンがポルノ映画やゲテモノ作品に出演していたという、比較的知られている経歴は番組ではスルーされていた。

ロッキーという生き様

そんな時、テレビでアリ対ウェプナー戦を見たスタローンが、無名の挑戦者の奮闘に触発され、3日間で書いたのが『ロッキー』の脚本だ。スチール写真を見ると、挑戦者ウェプナーは冴えない風貌のおじさんで身体はブヨブヨ、タイトルマッチでの善戦が如何に驚きだったかが良く分かる。

スタローンの脚本を気に入った映画会社は、7万5千ドルでその物語を買い上げようとする。だがスタローンは極貧だったのにもかかわらず、脚本料をタダにしてでも自分が主演を務める、という条件を譲らなかった。ロッキーはスタローン自身であり、また彼にとって映画の主役を務める唯一のチャンスだったのだ。

だが映画会社にすれば、無名の俳優を主演に据えるなどリスクが高すぎた。しかもスタローンは、出産時の医療ミスが原因で言葉が上手く話せないという弱点も抱えていたのだ。映画の主役候補として考えられていたのは、ポール・ニューマンやロバートレッドフォードなど3人の人気スターたちだった。ちなみにもう一人はアル・パチーノだが、番組ではなぜか端折っている。

ちなみにポール・ニューマンは56年の『傷だらけの栄光』で、イタリア系の貧しい家庭に生まれ、不良少年から世界チャンピオンに成り上がった実在のボクサー、ロッキー・グラシアーノを演じている。もちろんスタローンのロッキーも、このチャンピオンの名前から来ているのだろう。

スタローンのアメリカンドリーム

それでもスタローンの粘りで、映画は製作費100万ドルという低予算を条件に、彼を主演にして作られることになった。このあと予算が無い中、色々工夫を凝らしながら撮影を進めていった様子が語られる。だが時間の都合上か、幾つかの有名なエピソードが省かれたりしていて物足りない。

それに『ロッキー』ではスタローンに次ぐ重要人物である、ジョン・G・アヴィルドセン監督に殆ど触れていないところも気になった。最後に辰吉丈一郎が登場したが、そんな余計なものより映画自体をもっと深掘りして欲しかったところだ。

『ロッキー』は76年に公開されると、その印象的な主題歌も相まって予想を超える大ヒットを記録する。言葉や顔の麻痺などコンプレックスを抱える当時無名のイタリア男が、もがきながらも困難に向かっていく姿が観る者に感動を与えたのだ。

そして翌年には有力視されたマーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』を押しのけ、アカデミー作品賞や監督賞などを獲得し、アメリカンドリームを達成した映画としてハリウッド史に残る記念碑的作品となった。

『ロッキー』はシンプルな物語の中に、逆境の中で自分のアイデンティティーを貫く男の姿を、人間らしさも交えて熱く描いた物語である。この映画が名作たり得たのは、その熱い思いが共演者やスタッフに伝わり、悪条件の中でも皆がアイデアを出し合って作品づくりをした結果だろう。

ロッキシリーズは6作品まで作られたが、それぞれがスタローンの人生に重なっている。まさにスタローンとロッキーは一心同体なのだ。そしてスタローンの熱い思いとその物語は、現在の『クリード』シリーズに引き継がれている。

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