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映画「ティファニーで朝食を」

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トルーマン・カポーティの寓話

61年公開『ティファニーで朝食を』は、オードリー・ヘプバーンのエレガントなドレス姿と、彼女が劇中で歌う『ムーン・リバー』が印象的なロマンス・コメディ映画だ。原作はトルーマン・カポーティの中編小説で、監督はのちに『ピンクパンサー』シリーズを撮ることになるブレイク・エドワーズ。共演はジョージ・ペパード。

当初この映画の主役・奔放な女性ホリーを演じるはずだったのは、マリリン・モンローだった。だがモンローがこの役を断ったことで、オードリーがこの役を演じることになり、脚本も大幅に書き換えられた。ちなみに主役ホリーを娼婦としている解説もあるが、厳密にはそうではない。

カポーティの原作では、主役のホリーは無垢で自由奔放、男を誘惑することも厭わない小悪魔的な女性である。そんな女性を、妖精イメージのオードリーが演じることでアンマッチな面白さが生まれている。

オードリーのエレガントな魅力

だがオードリーにすれば、自分の中にないそんな役柄を演じるのに、かなりな難儀を強いられたようだ。この役のため背伸びをする彼女は自分の演技に不安を感じ、自問自答を繰り返しながら、どうにか最後までやり遂げる。

この映画でオードリーが演じたホリーという女性は、自由を追い求める現代的な女性。彼女にとって『ローマの休日』のアン王女と並ぶ印象的な役柄となり、演技者として新しい境地を開いた。

『ティファニーで朝食を』はカポーティの現代的な人物設定、エドワーズの洒脱な演出、オードリーのエレガントさとファッションでお洒落な映画になっているのが特徴。

映画のラストは、居場所を見つけた二人が雨の中、猫を間に抱擁するシーン。まあ確かに印象的なラストシーンだが、余韻を残す原作と違い、ハリウッドらしいハッピーエンドになっているところがありきたりだ。

だがやはり、この作品が忘れられないものになっているのは、ヘンリー・マンシーニの挿入歌『ムーン・リバー』によるところが大きいだろう。

名曲『ムーン・リバー』

劇中、窓辺にもたれたオードリーが、ギターを奏でながら歌う『ムーン・リバー』 決して上手ではないが、優しく儚げな声が旋律と調和し美しい。そして切々と歌いあげる姿は情緒に溢れていて、何とも言えない名シーンとなっている。

マンシーニはオードリーに合った瞬間、インスピレーションを受けてこの曲を作ったそうだ。まさにオードリーがホリーという女性を演じたからこそ、この映画が不朽の作品として観客の心に残っているのだ。

この『ムーン・リバー』を歌うシーンをカットされそうになり、オードリーが「そんなことは許さない」と言ったというエピソードが伝えられているが、どうやらそういう事はなかったらしい。

それどころかオードリーは自分の歌に自信がなく、映画のサントラ盤がレコード発売される際、彼女が歌う部分をカットするように自分で頼み込んだようだ。

『マイ・フェア・レディ』の失意

ちなみにこの3年後、オードリーは自ら望んでミュージカル『マイ・フェア・レディ』の主役イライザを演じる。だが熱心にボイスレッスンに励んだにもかかわらず、監督ジョージ・キューカーによって彼女が歌った全ての歌を、編集で吹き替えられてしまうという憂き目に遭ってしまう。

しかもアカデミー賞で『マイ・フェア・レディ』が作品賞・監督賞・主演男優賞など8部門を受賞したのに、オードリーは女優賞にノミネートさえされなかった。それどころか主演女優賞は、ブロードウェイの舞台『マイ・フェア・レディ』でイライザ役を演じていた、ジュリー・アンドリュースが『メリー・ポピンズ』の主役で受賞することになる。

もちろん謙虚なオードリーは、気落ちしたもののその事について何か言うことはなく、素直にジュリーを祝福する。しかし下町娘という役柄的にも嵌まっていなかった『マイ・フェア・レディ』は、オードリーにとって大きなトラウマを残す作品になってしまった。

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