「ちかえもん」一挙再放送(最終回まで)

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ピカレスク・ロマン『出世景清』

スランプから抜け出せない浄瑠璃作家、親不孝者の冴えない中年男ちかえもん(松尾スズキ)。せっかくの好素材・赤穂の討ち入り事件も、浮かぶアイデアはどれもグダグダ、というダメっぷり。

しかし、かつてのちかえもんは、ピカレスク・ロマンの『出世景清』で評判を取ったヒットメーカー。ビッグボス源頼朝の命を狙う、平家の残党・悪七兵衛景清。『出世景清』はこのダークヒーロー景清を主役に波瀾万丈の物語を展開しつつ、人間の葛藤と苦悩をも描き出す、手に汗握る傑作仇討ち劇だ。

「Don’t miss it !!」って是非見たいぞ、どこでやってんだ。是枝監督、賞狙いの作品はそろそろ大丈夫なんで、たまにはこんな痛快娯楽時代劇でも作ってみたら。駄目なら三池監督でもいいけど。

物語は佳境へ

ひょんなことから、遊女お初(早見あかり)の悲しい身の上を知ってしまったちかえもん。そこからインスピレーションをかき立てようとするも、筆は先に進まない。だがメモした相関図を万吉(青木崇高)に見られたことから、ドラマの方はサクサク進行。

天満屋での、お初と平野屋忠右衛門(岸部一徳)の直接対決。そこへ現われたたあほぼん徳兵衛(小池徹平)に慌てるちかえもんは、苦し紛れの嘘で墓穴を掘るハメに。と、最近の闇営業騒動でも聞いたような流れ。

でも嘘から出たマコトで、ちゃっかり馴染みの年増遊女・お袖(優香)に告白するちかえもん。お袖は驚くも、ちかえもんを意識し始めた様子。

直接対決からの刃傷騒動を、襖の向こうで盗み聞きしていたのが黒田屋九平次。物語の推進力となる典型的なヒールだ。九平次を演じる山崎銀之丞さん、ケレン味たっぷりの憎々しい芝居で悪人を演じ、この人情時代劇の中でも異彩を放つ存在である。

熱演『曽根崎心中』

ここからドラマはシリアスモード、断腸の思いでお初と別れたあほぼんは、七平次の悪だくみで窮地に追いやられる。万吉の計らいで再会する徳兵衛とお初、あの世で添い遂げようと悲劇の逃避行。そしてちかえもんに入水心中の知らせが届くが、「これは痛快娯楽時代劇や、本当に死ぬわけあれへん」って、ネタバレやん。

若い二人の悲恋を目の当たりにし、取り憑かれたように執筆に没頭するちかえもん。ついに『曾根崎心中』を書き上げ迎えた幕開け初日、ちかえもんに襲いかかったのは、もはやサイコパスと化した七平次。ちかえもん、刀を突きつけられあわや危機一髪。でもやっぱり現われました不孝糖売りの万吉、水に飛び込んだのはお前らかーい。

万吉に救われ竹本座に駆けつけるちかえもん、新作浄瑠璃は大評判でお袖とニッコリ、母上(富司純子)にも孝行者と認められハッピーハッピー。しかし義太夫として浄瑠璃の語りを熱演してくれた北村有起哉さん、あまりに真に迫ってビックリ。

『ちかえもん』の魅力

この新感覚コメディを引き締めるのは、山崎さんや北村さんなど、脇を固めるキャスティングのしっかりした歯ごたえ。おい、話題性と番宣目的だけでド素人を演じさせている民放ドラマ、少しは見習えよ。

万吉の正体は、ちかえもんの少年時代を見守り続けてきた浄瑠璃人形と判明。あほぼんとお初が生きていると知って憤るちかえもんに、万吉がまるで背後霊のように語りかける。いや人情コメディと思っていたら、スピリチュアル・ファンタジーだったんかいな。

でもそんな自由さと楽しさが『ちかえもん』の魅力。新解釈の近松像がコメディ人情劇に嵌まり、登場人物の喜怒哀楽にも胸打たれる傑作時代劇だった。

てな陳腐な結論は、わしのプライドが許さんのである。(おしまい)

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