フランシス・F・コッポラ「ゴッドファーザー」

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イタリア・マフィアのファミリー映画

既成のギャング映画の概念をくつがえし、イタリア・マフィアのファミリーを描いたドラマと暴力シーンの迫力で映画史に残る名作となったのが、72年の『ゴッドファーザー』だ。監督は当時まだ無名に近いフランシス・フォード・コッポラ。撮影のゴードン・ウィリスも、陰影の印象的な映像とノスタルジックな色彩で映画の厚みを出している。

音楽はニーノ・ロータ。イタリアの作曲家で、多くのフェリーニ作品の音楽を担当したことで有名だ。そのクラシカルな重厚さはロマンチックかつ荘厳、主題曲『愛のテーマ』は世界中でヒットした。

マリオ・プーゾは『ゴッドファーザー』の執筆中にパラマウントに映画化権を売り渡す。そしてパラマウントはアーサー・ペンやピーター・イェーツなどに監督のオファーを出すが断られ、製作は難航していた。そんなおり監督候補として名前が挙がったのが、才能を評価されながらもくすぶっていた若手のコッポラ監督だった。

コッポラのキャスティング

パラマウントはこの映画の製作を進めるにあたり、イタリア系圧力団体との衝突は避けられないと考えていた。そこでイタリア系アメリカ人の監督であるコッポラにオファーを出したのだ。

コッポラは当初このオファーに対し乗り気ではなかったが、監督作『雨の中の女』や、プロデュースしたジョージ・ルーカス監督の『THX 1138』が興行的に失敗し、苦境に陥っていた状況で監督を引き受けることにした。

こうしてコッポラは、原作の安っぽくて通俗的な部分(ハリウッド・ゴシップやセックス・スキャンダルなど)を削り、マフィアという特殊な世界でのファミリーの物語を強調して脚色した。そしてこの作品にのめり込み始めたコッポラは、ゴッドファーザーのヴィトー・コルレオーネ役としてマーロン・ブランドのキャスティングをパラマウントへ要求する。

当時のブランドは “かつてのスター” 状態、トラブルメーカーとしても知られていたので、撮影所に敬遠される存在だった。当然パラマウントにも反対の声が多かったが、コッポラは熱心にブランドの起用を訴える。結局ブランドが出演料ゼロのインセンティブ契約という条件を了承したため、彼の出演が決まった。

そして主役のマイケル・コルレオーネ役を、パラマウントがオファーしたウォーレン・ビーティが断ってきたため、コッポラは当時売り出し中の若手だったアル・パチーノを、パラマウントの反対を押し切って抜擢する。また当初低予算映画として製作が進められていたが、プーゾの原作が記録的な大ベストセラーとなったため、予算規模も膨らみ大作となっていった。

他のキャスティングは、コルレオーネ家の長男・ソニー役にジェームズ・カーン。ちなみにこのソニー役の候補には、ロバート・デ・ニーロもいた。次男のフレド役はジョン・カザール。数年後42歳の若さで亡くなってしまうが、出演した5作品がいずれも名作という希有な脇役俳優である。

ファミリーの顧問弁護士にロバート・デュバル。マイケルの妻ケイ役をダイアン・キートンが演じている。彼らはこの作品をきっかけにスターダムにのし上がっていった。また末妹コニー役はタリア・シャイア、コッポラの実妹だ。ちなみにコッポラの娘ソフィアも、洗礼を受ける赤ちゃん役として映画に登場している。

コッポラの才能

映画は公開されると、重厚なファミリーの物語と、痛みを感じるリアルな暴力描写が観客の評判を呼び、大ヒットを記録した。心配されたブランドもプロとしての研究熱心さで、貫禄がありながら人間味のあるマフィアのドンを演じてみせアカデミー主演男優賞を獲得、その存在感を再び世間に認識させた。

当時31歳のコッポラも巧みで精緻な演出力を発揮し、非常の世界に生きる男の孤独と苦悩を浮かび上がらせる人間ドラマを作り上げた。彼はそれまで神童と呼ばれ期待されていたが、ようやくその才能の真価を発揮することになったのだ。

こうして奇跡的な完成度を誇る名作『ゴッドファーザー』が誕生する。また2年後に作られたデ・ニーロが若き日のヴィトー・コルレオーネを演じる『パートⅡ』の作品的評価も高く、正続編2作品でアカデミー作品賞を受賞するという快挙を達成した。しかしこのあとコッポラは才能を使い果たしたのか『地獄の黙示録』以降これといった作品がないのは残念だ。

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