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工藤栄一監督「十三人の刺客」

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東映時代劇の新境地

1950年代に隆盛を誇った東映時代劇だが、60年代に入ると映画産業は斜陽となり、その人気も急激に衰えていった。また黒澤明監督が『用心棒』や『椿三十郎』といったリアルな殺陣を見せる新しいアクション時代劇を作り、「チャンバラ」と呼ばれた東映の様式的な時代劇は古くなってしまったのである。

そこで東映が63年に製作したのが、工藤栄一監督の『十三人の刺客』だ。この映画は藩主暗殺を巡る集団抗争劇で、ラスト30分に及ぶリアルな肉弾戦は、時代劇に新境地を開いたと言われる。

藩主暗殺を命ぜられる刺客のリーダー島田新左衛門に片岡千恵蔵、刺客に加わる島田の甥に里見浩太朗、刺客の参謀役・倉永左平太に嵐寛寿郎、暴君を守ろうとする側近・鬼頭半兵衛を内田良平が演じている。

オールスターの集団抗争劇

前半は明石藩藩主で将軍の弟である松平斉韶(管貫太郎)の暴虐ぶりと、刺客である島田ら13人が暗殺に向け準備する様子や、暴君であろうとも藩士の使命として殿を守ろうとする、鬼頭との駆け引きが描かれる。

主役の片岡千恵蔵はこれぞリーダーとういう役を、貫禄たっぷりに演じてみせる。剣の腕を振るう場面は少ないが、その部分は当時若手の里見浩太朗が準主役として引き受けている。またもう一人の大御所、嵐寛寿郎も余裕たっぷり。これこそオールスター映画の醍醐味という所だろう。

題名からしてもこの映画は『七人の侍』を意識して作ったとされているが、むしろ『忠臣蔵』の討ち入り場面を宿場町での決闘に替えて、少しリアルタッチで描いたという印象。敵役となる鬼頭が内田良平の好演で厚みのある人物となっており、ラストの集団抗争劇にも深みが出ている。

参勤交代で国に戻る途中の藩主を、罠を巡らせた宿場に誘い込み暗殺を謀ろうとする新左衛門。藩主を守る侍53人となっているが、あの行列はどう見ても100人以上。まあそこは映画的誇張と言うところだろうか。

迫力のクライマックス

そして最後、30分にわたる宿場町での決戦、くんずほずれず入り乱れてのリアルな殺陣は誰が誰だか判りにくいが、とにかくそのパワーと熱気は凄い。

西村晃演じる剣豪の平山九十郎、名前からして『七人の侍』の久蔵をイメージしたキャラクターだが、最後は刀を失って、うろたえながら斬り殺されるという格好悪さ。主役級を除きいまいち陰の薄い13人の刺客の中で、出色のキャラクターだ。

東映時代劇の新しい境地なるとされた本作だが、公開されて期待したほどヒットしなかった。工藤監督はこのあと『大殺陣』『十一人の侍』といった同じような集団抗争劇を作るが、結局時代劇が人気を取り戻すことはなく、東映映画は任侠路線に変わっていく。

この映画が傑作として見直されることになったのは、60年代末にリバイバル上映されるようになってからである。ワンカット・ワンカットに力を込める彼の美学が評価されたのだ。10年には三池崇史監督でリメイク。知恵蔵や寛寿郎のような貫禄ある役者はいないが、敵は200人ラストの戦いは50分と見せ所の迫力は充分だ。

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