映画「蒲田行進曲」

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『蒲田行進曲』はもともと戦前の松竹映画の主題曲で、レコード発売されヒットした歌謡曲のタイトル。それがそのまま蒲田松竹撮影所の歌として親しまれてもいた。80年、劇作家つかこうへいがこのタイトルを付けた舞台劇を発表、それをつか自身が小説化して直木賞を受賞した作品でもある。

その小説を角川映画が映画化を企画、深作欣二に監督を依頼し製作したのが82年の映画『蒲田行進曲』だ。タイトルに“蒲田”とはあるが、それは映画撮影所のアイコン的ワードに過ぎず、原作の舞台は京都の撮影所で時代は現代、松竹の「蒲田」とは直接関係がなく、むしろ東映京都撮影所をイメージして作った物語である。

現につかはこの物語を、東映の脇役俳優だった汐路章がテレビで語った階段落ちのエピソードをもとに作っている。また風間杜夫演じる銀ちゃんは、東映の時代劇スター萬屋錦之介がモデル。銀ちゃんがライバル橘と火花を散らすところも、東映の大御所・片岡知恵蔵と市川歌右衛門との関係をイメージしている。


最初、東映でも映画化の話があったが、岡田茂社長が「こんなのは当たらない」と一喝、企画が潰れていた。そのあと角川は配給を担当する松竹と組んで映画化を進めていたが、深作監督が「撮るのは東映京都出ないと困る」と主張する。そして深作監督の要求が通って配給は松竹、製作協力は東映という異例の体制となった。

銀ちゃん役は最初松田優作にオファーされていたが、松田がこの役を断り、つか組の常連だった風間が銀ちゃん、平田満が大部屋俳優ヤスを演じることになった。

物語は、売り出し中のスター銀ちゃんが、自分の子供を妊娠している落ち目の女優小夏(松坂慶子)を弟分の俳優ヤスに押しつけるところから始まる。ヤスは妊娠中毒で入院した小夏を懸命に看病、また彼女の出産費用を稼ぐため危険なスタントの仕事を引き受け、全身傷だらけになっていく。

そんなヤスの優しさと一途さに触れた小夏は、やがて心を開くようになり彼との結婚を決意、新居に引っ越して式の日取りも決める。だが若い恋人とも上手くいかず、ライバルの橘にも人気を超されて、気落ちしていた銀ちゃんは小夏へ復縁を迫り、小夏の心も揺らいでしまう。

しかし小夏は銀ちゃんを振り切りヤスと結婚する。銀ちゃんが大好きなヤスは彼に華を持たせて励まそうと、撮影中の映画『新撰組』のクライマックスとなる池田屋での階段落ちのスタントを志願する。それは銀ちゃん演じる土方歳三に斬られた浪士が、10メートル39階に及ぶ大階段を一気に転がり落ちるという、極めて危険なスタントだった。

命にも関わるスタントだったため誰も志願者がおらず、中止になっていたこのシーンをヤスは敢えて引き受けたのだ。だが撮影が近づくにつれて精神が不安定になったヤスは、小夏にも当たり散らすようになる。撮影当日にもゴネまくるヤス。それを見かねた銀ちゃんがヤスを殴ると「銀ちゃん、やっぱりそうでなくっちゃ」と正気を取り戻し、階段落ちを決行する。

大怪我を負い血を流しながらも、這いつくばって階段を昇っていくヤス。その途中「銀ちゃんカッコイイ」と叫びながら失神する。

銀ちゃんとヤスのサドマゾ的な関係が面白い、深作監督の新境地たる人情喜劇。話題性と宣伝だけで内容が無い、と批判されてきた角川映画としては異例の高評価を受け、数々の映画賞を受賞した。

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