ワールドカップの歴史 第18回ドイツ大会-後編

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FIFAワールドカップ、第18回ドイツ大会-後編(2006年)

「将軍の退場」

ポルトガルとオランダの熱戦

決勝T1回戦で注目カードの1つが、ポルトガルとオランダの試合だった。オランダは不調のエース、ファン ニステルローイを先発から外し、カイトをCFに起用した。序盤はオランダの流れ、ファン ボメル、ロッベン、ファン ペルシーが立て続けにシュートを放つが、枠を外れ得点には至らなかった。

オランダの攻勢が続いた23分、デコが右サイドよりクロス、パウレタの繋ぎをマニシュが決め、ポルトガルが先制した。しかし34分、C・ロナウドがブーラルズのファールで右大腿部を負傷、シモンとの交代を余儀なくされる。更に46分、コスチーニャがこの日2枚目の警告で退場処分、ポルトガルは10人となってしまった。

このチャンスに追いつきたいオランダは56分、DFのマタイセンに替えてファン デル・ファールトを投入、攻撃を強める。だが63分、今度はブーラルズが2枚目のイエローで退場、オランダも10人で戦うことになった。

それでも攻撃を緩めないオランダ。カイト、スナイデル、ファン デル・ファールトとシュートが続く。78分、デコが短時間で警告2枚を受け退場、またもや数的不利に陥った。フェリペ監督はこのピンチにフィーゴを下げチアゴを投入、シモンを1トップにして、守りながらもカウンターを狙う効果的な布陣を敷いた。

終盤オランダはパワープレーに出るが、攻撃は機能せずチャンスの芽は摘み取られた。ロスタイムにはファン ブロンクフォルストが2枚目のイエローで退場、このまま試合は終わりを迎え、ポルトガルが1-0と勝利した。

この試合で出されたカードは、イエロー15枚のレッド4枚。せっかくの好勝負を、技量の未熟な主審が台無しにしてしまった。それでもファン バステンが率いた若オランダの活躍は、観客に鮮やかな印象を残していった。

ポルトガル40年ぶりのベスト4

準々決勝は、ポルトガルとイングランドの対戦。イングランドは第1回戦、ベッカムのFKで1-0と勝利、ベスト8に勝ち上がって来ていた。オーウェンを失ったイングランドはルーニー1トップの布陣。デコを出場停止で欠いたポルトガルも、イングランドの強力な中盤を抑えるシフトを敷いた。

互いにチャンスを作るもフィニッシュの精度を欠き、前半は0-0の折り返しとなった。だが52分、ベッカムが左脚を負傷し交替すると、流れはポルトガルに傾き始める。62分、激しいつばぜり合いにルーニーが冷静さを失い、カルバーリョの股間を踏みつけて一発退場となってしまった。

10人となったイングランド。それでもファーディナンドとテリーを中心に守りを固め、フィーゴとC・ロナウドが繰り出す攻撃を防ぐ。試合は0-0で延長に突入、劣勢のイングランドも反撃を試みるが、両チーム好機を逃して前後半の30分も無得点で終了した。

そして準決勝を決めるPK戦、ランパード、ジェラード、キャリックの3人がGKリカルドの好守に止められ、イングランドは追い込まれた。最後はC・ロナウドがゴールを突き刺し、決着をつける。こうしてポルトガルが、40年ぶりのベスト4入りを果たした。

フランスの復調

決勝T1回戦屈指の好カード、フランス対スペイン戦。フランスは出場停止明けでジダンが復帰したが、予選で3戦全勝の勢いを見せたスペインに分があると思われた。スペインはボランチのX・アロンソを起点に、テンポの良いパス回しで中盤を支配。26分にはCKからPKを得て、ビジャが先制弾を決めた。

追いつきたいフランス、ジダンはこれまで相性が悪かったアンリにもひたすらパスを送り、好機を作り出す。そして41分、リベリーがビエラとのワンツーで抜け出し、同点となるシュートを流し込んだ。ビエラ、マケレレのボール奪取と配球に悩むスペインは54分、ラウルとビジャに替えルイス・ガルシアとホアキンを投入、反撃を図る。

この後、両者互角の戦いでゲームは一進一退、試合は終盤を迎えた。83分、ジダンのFKがX・アロンソの頭に当たり、ゴール前ビエラのもとに、そこからフランスの勝ち越し弾が生まれた。更にロスタイムに入った95分、ビルトールのパスを受けたジダンがドリブル突破、プジョルのブロックを巧みにかわすと、決定的な3点目を叩き込む。

フランスはここに来てチームが纏り実力を発揮、ベスト8へ進出した。そして1回戦で敗れたスペインも、その若さと躍動感は次の大会に向けて可能性を感じさせるものだった。

ブラジルの敗退

準々決勝は、前回王者ブラジルとの対戦。前々大会で決勝を戦った相手でもあった。ブラジルは1回戦で難敵ガーナを3-0と撃破、先制点を挙げたロナウドはW杯通算得点を15に伸ばし、ゲルト・ミュラーの記録を更新していた。

フランスは強固な守備でブラジルの攻撃を抑え、ジダンも巧みなボール捌きで相手を惑わした。そしてリベリー、マルダーの両サイドにボールを送り、ブラジルDFを混乱させる。対するブラジルは肥満体型となったロナウドがゴール前にへばりつき、前線の流動性も今ひとつだった。

54分、ジダンが放ったピンポイントのFKをアンリがボレーで合わせ、フランスが先制する。反撃を試みるブラジルは、アドリアーノとロビーニョを投入するが攻撃は機能せず、得点を奪えないまま試合は終了を迎えた。

ブラジルの放ったシュートは8本で、そのうち枠内に飛んだのはロナウドの1本のみ。1-0というスコア以上に、フランスが圧倒したゲームだった。強力なタレントを擁しながら纏りを欠いたブラジルは、最後は良いところ無く大会を去って行った。

フランス 2大会ぶりの決勝へ

準決勝はフランスとポルトガルの対戦。堅守で勝ち上がってきた両者の攻防、C・ロナウドが再三ドリブルを仕掛けるが、フランスはCBテュラムとギャラスの早い寄せで突破を許さない。だが中盤の攻防はポルトガルがやや優勢、フランスも攻めあぐねていた。

膠着状態が続いた32分、マルダからパスを受けたアンリがPエリアで鋭い切り返し、するとリカルバーニョが思わず足を出してファール、フランスがPKを得る。キッカーはジダン。反応の鋭いGKリカルドを相手に助走を取らない素早いシュート、確実にゴールを決めた。

ダイビングにも見えるアンリのPK、ポルトガルの選手は主審に不信感を抱き、度々抗議を繰り返すようになる。ナーバスになったチームはリズムを崩し、フランスは苛立ちを強める相手をいなしながら、残り時間を守り切った。

78分、C・ロナウドFKのこぼれ球をフィーゴが頭で捉えるが、ボールは枠を外れていった。ポルトガルは最後のチャンスを逃し、このまま試合は終了する。経験に勝るフランスが安定の試合運びで1-0と勝利。『将軍』ジダンの花道を飾るべく、決勝の戦いに臨むことになった。

地元ドイツ ベスト4へ

開催国ドイツ、1回戦の相手はスウェーデン。ドイツはバラック、クローゼらの攻撃陣が躍動、ポドルスキーの2得点でスウェーデンを打ち破った。

アルゼンチンは開始早々メキシコに先制を許すも、すぐにリケルメのFKからクレスポが同点弾。その後両者とも決め手を欠くが、アルゼンチンはテベス、アイマール、メッシを次々投入、延長に入って主導権を握った。

98分、左サイドでボールを持ったソリンが、右へ開いたM・ロドリゲスにロングパス。ロドリゲスは胸トラップから左脚を一閃、GKサンチェスの守るゴールをぶち抜いた。こうして2-1と勝利したアルゼンチンは、準々決勝でドイツと戦うことになった。

強豪国同士の対戦、前半は互いの出方を窺う慎重な展開となった。そして0-0で迎えた後半の49分、リケルメ左からのCKをアジャラがダイビングヘッド、アルゼンチンに先制点が生まれた。1点を追うドイツは猛反撃を開始、アルゼンチンは中盤の底・マスケラーノの粘り強い守りでピンチを防いだ。

ところが71分、GKアボンダシェリが接触プレーで腰を痛め退場。ペケルマン監督はその後、動きの鈍くなったリケルメとクレスポも交代させた。しかし、リケルメとクレスポがいなくなった事でアルゼンチンは守りに入り、そこをドイツにつけ込まれる事となる。

80分、バラックが左サイドからクロス、それをボロフスキが頭で繋ぐと、クローゼがDFに競り勝ちヘディングシュート、ついにドイツが追いつく。既に攻撃の柱を下げ、交代枠も残っていないアルゼンチン。切り札のメッシを使うことも出来ず、反撃の手立ては失われていた。

延長に入っても決着はつかず、120分の試合が終了、勝負はPK戦に持ち込まれた。PK戦では同い年のライバル、カーンの激励を受けたレーマンが気迫のセーブ、2本のシュートを止めて、地元ドイツをベスト4へ導いた。

イタリアの堅実な戦い

イタリア1回戦の相手は、伏兵オーストラリア。ヒディンク監督は3トップ、デル・ピエロ、ルカ・トニ、ジェラルディーノを徹底マークさせ、イタリアの攻撃を抑えた。50分にはマテラッツィが一発退場、イタリアは10での戦いを強いられる。それでもアズーリはカンナバーロを中心とした伝統の堅守を見せ、フィジカルで押してくるオーストラリアの攻めを防いだ。

延長目前の後半ロスタイム、pエリア内に侵入したグロッソが倒され、イタリアが土壇場でPKを獲得した。これを途中出場のトッティが豪快にシュート、勝負を決めた。

準々決勝で対戦したのは、1回戦スイスを0-0の延長PK戦で下し勝ち上がってきたウクライナ。ウクライナはシェフチェンコのワンマンチーム。イタリアは相手エースを難なく抑え、攻撃陣も好調、ザンブロッタの先制点とトニの2得点で3-0の快勝を収めた。

デル・ピエロの殊勲弾

準決勝はイタリア対ドイツ。地元サポータの大声援を受けるドイツは序盤から積極的な攻撃を仕掛けるが、イタリア鉄壁の守備を破ることが出来なかった。だがドイツの若いCBコンビ、メルテザッカーとメッツェルダーも水際で失点を防ぎ、両者得点が奪えないまま時間は経過していった。

延長に入ると、イタリアはイアキンタを投入する。大柄なイアキンタは対面する小柄なラームを圧倒し、ドイツの守備を混乱させた。92分にはザンブロッタが強烈なシュート、しかしボールはバーに弾かれ得点はならなかった。

104分、マルチェロ・リッピ監督はデル・ピエロを投入、攻撃の枚数を増やして勝負に出る。これまでWカップ4回全てのPK戦を制したドイツに対し、イタリアは過去3回のPK戦で未だ勝利無しだった。リッピはなんとしても、延長戦で勝負を終わらせたかったのだ。

延長も終わりが近づいた119分、デル・ピエロが放った右CKは跳ね返されるが、こぼれ球を拾ったピルロがDFを引きつけスルーパス、グロッソがダイレクトシュートを叩き込んだ。更に121分、ドイツが反撃で前掛かりになったところに、カンナバーロのインターセプトから一気にカウンター、ジェラルディーノのパスを受けたデル・ピエロがレーマンをかわす鮮やかな追加点を決めた。

歓喜に沸くイタリア、直後に笛が吹かれて試合は2-0で終了した。延長120分に渡った熱い戦いは、攻守に質の高さを見せたイタリアが地元ドイツを破り、3大会ぶりの決勝へ進むことになった。

この後ドイツとポルトガルの3位決定戦が行なわれた。ドイツはカーンが今大会初出場、ポルトガルの攻撃をヌーノ・ゴメスの1点に抑え、シュバインシュタイガーの2得点などで3-1と勝利した。この試合では得点を挙げられなかったが、クローゼが5ゴールで得点王となった。

ジダンの頭突き

第18回ワールドカップ・ドイツ大会決勝のイタリア対フランス戦は、7月9日にベルリンのオリンピア・シュタディオンに6万99千人の観客を集めて行なわれた。

試合は開始早々動いた。6分、GKバルテズのロングフィードを左に開いたアンリが頭で落とす。そしてPエリアに侵入したマルダがマテラッツィに倒され、フランスがPKを得た。ジダンはボールをセットすると、「バネンカ」と呼ばれるチップショットを放つ。

ボールはバーに当たるが、落下してゴールイン。ブッフォンの意表を突く、巧みなジダンのPKでフランスは先制した。リードされ、スイッチを入れ直すイタリア。中盤底の司令塔・ピルロの正確なロングキックで両サイドが攻め上がり、反撃を開始した。

19分、イタリア右CKのチャンス。ピルロがファーサイドにピンポイントのボールを送ると、マテラッツィが頭で合わせ同点とした。その後は互いに好機をモノに出来ず、試合は膠着化する。フランスはイタリアの固いDFを破れず、イタリアもピルロが密着マークを受け、その配球を封じられてしまったのだ。

決勝戦は延長に突入。その104分、ジダンが右サイドのサニョルにボールを送ると、リターンのクロス。Pエリアでフリーになったジダンがヘディングシュートを放つが、ブッフォンも鋭い反応で弾いた。

その6分後、思いがけない出来事が起こる。挑発の言葉に反応したジダンがマテラッツィの胸に頭突き、一発レッドを受けてしまう。キャプテンマークを外し、ピッチを去るジダン。『レ・ブルーの将軍』最後の試合は、後味の悪いものになってしまった。

イアタリア 4度目の栄冠

10人となったフランスだが、ゴールを守り切り試合は1-1で終了。優勝はPK戦で決まることになった。先攻のイタリアは1人目のピルロが落ち着いて決めると、2人目以降も順調にPKを成功させた。対するフランスは、2人目のトレゼゲがクロスバーに当て失敗してしまう。

結局5人全員がゴールを決めたイタリアが勝利、6大会ぶり4回目の優勝を果たした。PK戦も初勝利で、94年の決勝で優勝を逃した屈辱も晴らす事になった。

大会MVPに選ばれたのはジダン。ジダンは引退後、退場のいきさつについて多くを語ることはなかった。

次:第19回南アフリカ大会-前編

カテゴリー サッカー史

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