ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」

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巻き込まれ型サスペンスの代表作

59年の『北北西に進路を取れ』は、ヒッチコック監督が得意とする巻き込まれ型サスペンスで巨匠後期の代表作。アメリカの諜報部員と間違われた普通の男が、敵のスパイ組織に追われ、手に汗握る展開が繰広げられる逃走劇エンターテインメントだ。

『北北西に進路を取れ』には、スリルあり、ウイットあり、謎の美女とのロマンスありと、まさにサービス満点。主人公が複葉機に追われる有名なシーンや、ラシュモア山でのクライマックスなど、ダイナミックなアクションも楽しめる。ヒッチコックを知るには、まず見ておくべき作品だろう。

諜報員に間違われる広告業者の重役、ロジャー・ソーンヒルにケーリー・グラント。何故かロジャーと行動を共にする謎の美女、イヴ・ケンドールにエヴァ・マリー・セイント。そしえ敵スパイの親玉フィリップ・レナードを、ジェームズ・メイソン、その手下レナードをマーティン・ランドーが演じている。

ヒッチコック演出の醍醐味

真面目にストーリーを見れば穴だらけ、架空の人物ジョージ・カプランとかマイクロフィルムとか、実態のないお馴染み「マクガフィン」も満載だ。しかしハラハラドキドキの連続とテンポの良い演出で、観客はそんなことを気にせずに物語に引き込まれてゆく。

重要なのは、ストーリーより映画ならではのハッタリやケレン味。全盛期にあった巨匠ヒッチコック監督の手腕を楽しむべき作品である。

そして有名なのが、ケーリー・グラントがトウモロコシ畑で複葉機に襲われるシーン。バスを降り、だだっ広い農場の停留所で所在なしにたたずむロジャー。しかし遠くで農薬を蒔いていた複葉機が、不穏な動きを見せ始める。次第に近づく複葉機。ロジャーは隠れる場所もない広い畑でただ逃げるしかなく、絶体絶命のピンチを迎える。

徐々に不安を煽り、一気に見せ場に持って行くヒッチコックの鮮やかな手並み。この7分間のシーンには殆どセリフも音楽もなく、映像と編集だけで緊迫感を生み出している。例によって、誰がなぜロジャーを襲うのか明らかではないが、ヒッチコックのありきたりな演出を嫌った、アイデアと実験精神に溢れる名場面である。

意味深なラスト

最後は、敵に追われたロジャーとイヴが、ラシュモア山に掘られた歴代大統領の、巨大な顔をよじ登るクライマックス。もともとヒッチコックはこの場面を思いついたところから、『北北西に進路を取れ』を制作している。

もちろん本物の場所は使えないので、このシーンはスタジオに実物大のセットを造って撮影された。ラスト間一髪で危機を逃れ、断崖にしがみつくイヴを引き上げるロジャー。すると場面は一転、寝台列車のベットへ。

そのベッドで抱き合うロジャーとイブ。二人を乗せたニューヨーク行きの特急 “20世紀号” は、トンネルの中に吸い込まれていった。まさに説明不要、見事な切れ味と無駄のない演出、そして意味深な終わり方がなんとも粋だ。

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