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アルフォンソ・キュアロン「ゼロ・グラビティ」

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SFヒューマンサスペンス

13年公開の『ゼロ・グラビティ』は、突然の事故で宇宙に放り出された女性のサバイバルを描く、SFヒューマンサスペンス。臨場感溢れる宇宙空間の3D映像と、シンプルだがドラマ性の高い内容が評価され、数々の映画賞にノミネートされた。

第86回アカデミー賞では本命視された作品賞を逃すものの、監督賞のほか技術部門を中心とした7部門で栄冠に輝いている。

製作・監督を務めたのは、『トゥモロー・ワールド』『ROMA/ローマ』で知られる、映像派のアルフォンソ・キュアロン。ギレルモ・デル・トロやアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥと並ぶ、メキシコ3大監督の一人だ。

リアルに再現された宇宙

主人公が地球に生還するラストを除き、全編宇宙空間で物語は展開する。登場人物は、エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)と、テラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルニー)の二人だけ。しかも後半はサンドラ・ブロックの一人劇、殆ど映像だけでみせる映画となっている。

しかし映画の冒頭から、緊張感溢れる13分のワンカットシーン。一本のロープを頼りに命を繋ぐ二人のサスペンスが、息を呑むような映像美を背景にして描かれていく。最新技術を駆使したVFX撮影の無重力表現があまりに素晴らしく、観客はリアルに再現された宇宙の映像に思わず目を奪われてしまう。

そして、不気味なほど無音な漆黒の宇宙と、画面下で美しく輝く地球。この生と死の鮮やかな対比が、ヒロインの生還劇に説得力とドラマ性を与えている。娘を亡くした喪失感から立ち直り、必死に生き延びようとするライアン。彼女が最後に地に足を着け、地球の重力を実感する姿は感動的。まさ生きることの素晴らしさを、象徴的に描いた見事なラストだ。

キューブリックの『2001年宇宙の旅』を思い起こさせるこの作品。ヘルメットの中の呼吸音など、そのまま『2001~』を連想させるような場面も出てくる。キュアロン監督は最新の撮影技術を使って、この映画史上の傑作に迫っていると言える。

人間ドラマの作品

宇宙空間の光を再現するの開発されたのが、「ライトボックス」と呼ばれる特殊装置。この装置で地球の反射や太陽の光など、あらゆる角度からの光源が創りだされ、映像表現に大きな効果を生み出すことになった。

また無重力状態を再現するため俳優を12本のワイヤーで吊り、コンピューター制御されたロボットアーム付きのカメラを使った撮影が行なわれている。主演のサンドラ・ブロックは、装置の張力を感じさせないように5ヶ月間の訓練を重ね、自然に見える動き身につけたそうだ。

宇宙空間や宇宙船など、画面の殆どはCGで創られているが、ここにも時間や労力が注がれている。最初に全編を通したシミュレーション用のアニメを作成。そこに俳優の動きを合成し、最後にGCで仕上げるという手間の掛けよう。撮影に4年半を費やすことになった。

しかしこうして緻密に作り上げた映像も、あくまで「観客にエモーショナルな体験を与えるための道具」に過ぎないと言い切るキュアロン監督。この映画が優れているのは卓越した映像表現もさることながら、描き込まれた登場人物のキャラクターと、しっかりした人間ドラマが存在しているからだろう。

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