映画「エデンの東」

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ナイーブな青年 ジェームズ・ディーン

アメリカのノーベル賞作家ジョン・スタインベックによる同名の原作は、旧約聖書のカインとアベル兄弟のエピソードを題材に、親子三代の物語として描かれる壮大な叙事詩。エリア・カザン監督がその物語の後半部分を切り取り、悲劇と愛情の家族ドラマとして描いたのが、55年公開の映画『エデンの東』だ。

“エデンの東” とは、弟アベルを殺した兄カインが罪を問われて「エデンの園」を追放、その東側の地に流されることを意味する。ちなみに小説と映画では、この兄弟の関係が逆転している。

映画『エデンの東』を不朽の名作たらしめているのは、主演ジェームズ・ディーンの魅力に負うところが大きいだろう。主人公は、生まれつきの不器用さから劣等感に苛まされ、父親の理解を得られずに悩み傷つく青年キャル。ジェームズ・ディーンはその青年の心理を感受性豊かに表現し、多くの観客の共感を呼んだ。

当初この役はマーロン・ブランドが予定されていたが、年齢とイメージが合わずキャスティングを変更。エリア・カザン監督は、端役の経験しかなかった当時23歳のジェームズ・ディーンを主役に抜擢した。

エリア・カザンが設立した「アクターズ・スタジオ」出身で同じ苦悩型の俳優ではあるが、繊細なイメージのジェームズ・ディーンでなく、ひねくれ者のマーロン・ブランドがこの役を演じていたら、かなり違った印象の映画になっていただろう。

相克と愛憎による葛藤の物語

カリフォルニアの農場経営者アダム・トラスク(レイモンド・マッセイ)には、アーロン(リチャード・タヴァロス)とキャルという二人の息子がいた。アダムは温厚で優等生の兄アーロンを可愛がる一方、反抗的な態度を見せる弟キャルには厳しく当たっていた。

本心では父親の愛情を求めながら、その冷たさに傷つき、時には怒りを露わにして狼藉を働くキャル。そのことを諭されるも、気持ちを理解して貰えないことに苛立ち、さらに父親への反発を強めていく。

そんな日々を送っていたキャルは、祭りの日に夜の遊園地でアーロンの恋人アブラ(ジュリー・ハリス)とたまたま遭遇。時を共にしたことでアブラは粗野だと思っていたキャルのナイーブな内面を知り、二人の中は急接近していく。

一瞬の安らぎを得るキャルだったが、良かれと行なったことがすべて裏目。家族とのすれ違いはより大きくなり、物語は悲劇的な展開へと向かっていく。父と息子そして兄と弟の、相克と愛憎による葛藤。最後は許しが訪れる家族愛のドラマが、舞台演出を得意とするカザンの指導で生き生きと演じられる。

鬱屈した青年期のアイコン

ジェームズ・ディーンが見せる、上目遣いの物憂げな表情が印象的。映画に描かれる青春期の屈折、孤独、いらだち、渇望。そんな若者像をこれほど繊細に甘く、演じられる俳優は他にいないだろう。思わず寄り添いたくなる彼の存在で、『エデンの東』は青春映画の傑作となったと言える。

「アクターズ・スタジオ」で「メソッド演技」を学んだジェームズ・ディーン。いくつかの映画で端役を経験したあと、主役を務めた『エデンの東』で一大センセーショナルを巻き起こして、一躍人気者となった。

だが映画公開半年後の55年9月30日、愛車ポルシェを走らせ衝突事故、複雑骨折と内臓破裂でほぼ即死状態だった。主演2作品目となる『理由無き反抗』の公開1か月前、『ジャイアンツ』の撮影終了1週間後だった。

24歳の若さで亡くなったジェームズ・ディーン。活動時期は短かったが強烈な印象を残し、鬱屈した青年期のアイコンとして永遠に記憶されることになった。

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