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アナザーストーリーズ「2001年宇宙の旅~」

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『2001年宇宙の旅』製作の裏話

今週の『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』は、【“2001年宇宙の旅”未来への扉は開かれた!】

鬼才スタンリー・キューブリック監督によるSF映画の金字塔、『2001年宇宙の旅』( 68年)。この映画の素晴らしさは人類が月に到着する以前の時代に、イマジネーションにあふれる宇宙と未来の姿を刺激的、そして神秘的に見せてくれるという、映像のエンターテインメント性にあるだろう。

番組はキューブリック監督とストーリー担当のアーサー・C・クラーク、そして撮影に関わったスタッフたちを中心に、難航を極めた製作の裏話が語られていた。

映画のキー・アイテム「モノリス

それまでの宇宙人が登場する映画といえば、子供だましのB級作品ばかりだったというこの時代。キューブリックは地球外生命を扱った本格的なSF映画の製作を目指し、SF小説界の第一人者アーサー・C・クラークに協力を依頼する。

当時キューブリックが36歳で、クラークは47歳。キューブリックが「恐るべき子供」と呼ばれていたのは知っていたが、クラークが孤独なオタクで、周りに自分のアイデアを自慢していた「うぬぼれ屋」だったという事は今回初めて知った。

まず二人が取り組んだのが、地球外生命のデザインだった。しかし気に入ったデザインがあったとしても、映画で使うとなるとしっくりこず、たどり着いたのはクラークの「本当に進歩した地球外生命は、完全に無機質かも知れない」というアイデア。

そこで誕生したのが謎の物体「モノリス」。宇宙人が造った遺物という設定の、ストーリーを動かすキー・ビジュアルだ。宇宙人を登場させるより、モノリスでその存在を感じさせる方が物語に深みが出ると考えたのだろう。

このモノリスが発するシグナルの謎を探るため、宇宙船ディスカバリー号が信号の送られた木星へ調査に向かう、というのがこの映画のストーリー。そしてクラークの科学的知識を総動員して考えられた、人工冬眠、人工重力、人工知能HAL9000のアイデアが映画に奥行きをもたらす。これらのテクノロジーを見事なビジュアル感覚と斬新さで具象化出来るのが、キューブリックの凄さである。

「スターチャイルド」の誕生

ここで映画の主役、ボーマン船長を演じるキア・デュリアが登場。セリフが難解な技術用語ばかりでちんぷんかんぷん、まるで外国語を学ぶようで、覚えるのに何週間もかかったと苦労を語る。もう一生そのセリフを忘れないというデュリア、その難解な長ゼリフを83歳になった今でも諳んじられるとは、その苦労が伺える。

映画の結末が思い浮かばず、話し合いを重ねるキューブリックとクラーク。完璧主義で容赦ないキューブリックの要求に、アイデアを何回も書き直され、行き詰まって落ち込んでしまうクラーク。そして彼が限界に達したと感じたときに頭に浮かんだのが、ボーマンが赤ん坊に逆行し軌道上に浮かぶという「スターチャイルド」のイメージである。

このアイデアにキューブリックのGOサインが出て、ようやく物語は着陸点を見つける。しかし最後に残ったのは、ナレーションの問題。クラークは「説明なしでは物語が分からない」と脚本にナレーションを付け加えたのだが、キューブリックはそれを全部カットしてしまった。

たとえ意味は分からなくても、神秘的な部分を残し、観客のイマジネーションを膨らませる方がいいとキューブリックは考えたようだ。こうして完成した映画は68年4月4日に公開。しかし斬新だが意味不明なこの作品は観客と評論家を惑わせ、最初の頃の評判は散々だった。

しかし先入観に捕らわれない若い世代の圧倒的な支持を受けて、まもなく『2001年~』は正当な評価を受けることになる。この映画が後世に与えた影響は計り知れないもので、単にその後のSFを変えただけでなく、多くの若い映画関係者に刺激とインスピレーションを与えることになったのである。

後世に与えた影響

次に登場するのは、今や大御所の映画人ダグラス・トランブル。現場のスタッフに、高いレベルの仕事を求めていたキューブリック。当時20代半ばのトランブルはその要求に応え、特殊な撮影方法を考えだして専用の撮影機材「スリットスキャンマシン」も自作。あの幻想的な「スターゲイト」の映像を生み出した。

このあとランブルは監督作の『サイレント・ランニング』を始め、『アンドロメダ・・・』『未知との遭遇』『スター・トレック』『ブレードランナー』と、その後のSE映画を語るには欠かせない作品に関わりSFX界の第一人者となっている。

そして映画の成功に欠かせない人物が、美術監督のトニー・マスターズ。ディスカバリー号船内での人工重力を表現するシーンでマスターズが考え出したのは、観覧車のように360度回転する巨大なセット。以前このセットの写真を見たことはあったが、今回実際に回転する映像を見られてちょっと感激。

このセットに入って演技したキア・デュリアは、「ウォルト・ディズニーでも思いつかないトリックですよ」と大げさに言っていたが、実は回転する仕掛けのアイデアは初めてではない。51年につくられたMGMミュージカル『恋愛準決勝戦』にはフレッド・アステアが重力を無視して、ワンカットで室内の壁や天井を踊るというシーンがすでにある。

だとしてもCG技術が無かったこの時代、ボーマン船長が円形の通路を下から上へ半周するシーンは、初めて観る者には驚きの映像である。

そして物語のキーとなるモノリス。最初数千万円かけてつくったアクリル製の透明なモノリスだが、キューブリックの考えるイメージと違いNG。マスターズは14枚の試作品を作り直すなど試行錯誤、ついに不気味な漆黒色という洗練された形のデザインがキューブリックに認められる。

これだけでもスタッフの苦労が伺えるが、番組で語られたのは山のようにある撮影エピソードのほんの一部。本を読むと、ヒトザルの造形とメイク、宇宙のリアルな陰影のコントラスト、専門家の科学的考証に基づいた未来テクノロジーの表現など、キューブリックが全てに拘っていたことが分かる。

制作費1050万ドル、4年の歳月と膨大な手間をかけられて誕生した『2001年宇宙の旅』。まさに天才の執念と未知の世界への探究心で、歴史を変える傑作SFが生まれたのだ。

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