サム・ペキンパー「ワイルドバンチ」

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69年公開の『ワイルドバンチ』は、西部開拓史上最強の強盗団 “ワイルドバンチ” を主役に、滅びの美学を凄絶なヴァイオレンスで描いた異色の西部劇。65年の『ダンディ少佐』以来4年ぶりにメガホンを取ったサム・ペキンパー監督が、渾身の思いでつくった代表作だ。

当時西部劇が衰退していく中、スローモーションを駆使した暴力描写の数々はファンの間で賛否が割れるほど議論を呼んだ。特にラストのスローモーションによる機関銃での殺戮シーンは、「デス・バレエ(死の舞踏)」と名付けられるほどの衝撃を与え、否定派に「これで西部劇はとどめを刺された」と嘆かせている。

“ワイルドバンチ” のリーダー、パイク・ビショップを演じるのはウィリアム・ホールデン。他にもロバート・ライアン、アーネスト・ボーグナイン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソンといった渋いベテランたちを配し、ウェスタン挽歌の哀愁を奏でた。


舞台は20世紀初頭のメキシコ。「法と秩序」の時代に入ったアメリカに住むことの出来なくなった “くたびれた無法者たち”  が国境の南の地に流れて行き、彼らなりの正義のために闘って壮絶に死んでいく。知性もモラルも無い連中だが、その連帯感にはある種の矜持が感じられる。

冒頭の銀行襲撃から、町中での銃撃戦、追跡、列車強盗、そして最後のメキシコでの戦闘と、息をもつかせない展開で物語は進む。そしてスローモーションを多用したヴァイオレンスシーンが、消えゆく西部の無法者たちへの哀悼となり、血なまぐさい場面さえある種のロマンチズムを漂わせる。

完璧主義者で血の気の多い監督として知られ、しょっちゅう製作者や出演者とトラブルを起こしていたサム・ペキンパー。出世作『昼下がりの決斗』(62年)の時はフィルムの編集を巡ってプロデューサーと対立、ついには監督でありながら撮影所への出入りを禁止されてしまった。

次に監督した『ダンディ少佐』(65年)では撮影開始直から、プロデューサー、脚本家、主演のチャールストン・ヘストンらと次々にトラブルを起こして現場はカオス状態。ペキンパーは撮影終了後、編集作業を前に降板した。こうして仕事を干されたペキンパーには、トラブルメーカーとしての悪名がついてまわる。

『ワイルドバンチ』のオファーが届いたアーネスト・ボーグナインは、ペキンパー作品の常連だったウォーレン・オーツにおそるおそる「彼はどんな男か?」と尋ねた。オーツが「あんたを食い尽くしてしまうだろうよ」と答えると、ボーグナインは「それなら別れた女房よりマシだ」と出演を決めたそうだ。

『ワイルドバンチ』の中で最も観客を驚かせたのは、追っ手が馬に乗ったまま爆破された橋もろともに激流の中へ落ちていく様子を、流麗なスローモーションで捉えたシーンだろう。この撮影は本当に命がけだったらしく、ベテランスタントマンが火薬の多さに気づかなければ、大爆破で死者が出たかも知れなかったそうだ。

ラストの殺戮場面はカメラ4台をフルに使い、約2週間かけて撮影された。黒澤明監督の『七人の侍』にスローを使った効果的な場面があり、ペキンパーはこれを意識していたと言われる。またスローによる銃撃シーンはアーサー・ペンの『俺たちに明日はない』(67年)が強烈で、ペキンパーは口癖のように「あの映画を越えよう」と言っていたという。

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