アメリカ映画界の祭典、第93回アカデミー賞授賞式が、25日にロサンゼルスで行われた。コロナ禍を考慮し、例年の会場ドルビー・シアターに加え、近くの鉄道駅ユニオンステーションにも会場を設け、出席者も通常3000人のところを約170人に絞っての授賞式となった。
昨年は大作・話題作が軒並み公開延期となり、今回ノミネートされた8作品はやや華やかさに欠ける顔ぶれとなったが、それだけに地味ながら力のある作品が揃った印象だ。
その中で作品賞に輝いたのは、大本命と見られていた『ノマドランド』。併せて監督賞と主演女優賞の主要3部門を制覇した。
車上生活者というマイノリティに焦点を合わせたこの作品、価値観が多様化する時代を象徴した受賞作と言えるだろう。
監督賞を受賞したクロエ・ジャオは、中国生まれの女性監督。女性としてはキャスリン・ビグロー(08年『ハートロッカー』)以来の監督賞受賞となった。
だが過去に母国の政治体制を批判したという経歴があり、中国で彼女の受賞は報道されていない模様。
主演女優賞のフランシス・マクドーマンドは、『ファーゴ』(96年)『スリー・ビルボード』(17年)に続く3回目の受賞。『ノマドランド』のプロデューサーでもあり、2つのオスカーを手にした。
主演男優賞は、昨年亡くなったチャドウィック・ボーズマンさんの受賞が有力視されたが、オスカー像を手にしたのは『ファーザー』のアンソニー・ホプキンス。91年の『羊たちの沈黙』以来2度目のオスカー獲得となったが、83歳での受賞は歴代最年長の記録だ。
助演男優賞は『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』で黒人のカリスマ指導者を演じたダニエル・カルーヤ。助演女優賞には『ミナリ』のユン・ヨジョンが輝いた。
ユン・ヨジョンは韓国人女優。アジア人系女優としては、58年『サヨナラ』で助演女優賞に輝いたナンシー梅木以来となる。
近年、アジア系やアフリカ系へのヘイトクライム問題で揺れるアメリカ、今年の演技部門はノミネート20人のうち9人が非白人系だった。これまで保守的だったアカデミーも数年前に猛批判を浴び、マイノリティにも気を配る傾向がいっそう顕著となったようだ。