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ワールドカップの歴史 第20回ブラジル大会-後編(2014年)

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FIFAワールドカップ、第20回ブラジル大会-後編(2014年)

「南米陥落」


前編「波乱の予選リーグ」より続く

セレソンの焦りとハメスの輝き

決勝トーナメント最初の試合は、地元ブラジルとチリの対戦。チリは前線からの果敢なプレスに加え、守備陣はマークを徹底、ブラジルの攻撃を押さえにかかった。しかし開始18分、ネイマールのCKをチアゴ・シウバが後方にそらし、それをダビド・ルイスが強引に押し込んで先制点を決めた。

しかし集中を切らさなかったチリは、32分にブラジルのバックパスをカット、中央のA・サンチェスにボールが渡り同点弾が生まれる。そこからゲームは一進一退の攻防戦、チリ選手の献身的な守りと全力プレーは、攻め急ぐ王国を手こずらせた。

試合は延長に突入。両チーム交代枠を使い切り、イエローカードも飛び交う総力戦となったが、120分を終わっても勝負はつかず、総てはPK戦に託された。両チーム二人ずつが外し、5人目のネイマールが確実に決めたあと、チリのシュートはポストを直撃、辛うじてブラジルが準々決勝に進む。

大波乱となった「死のグループ」を勝ち上がったウルグアイは、勢いに乗るコロンビアと対戦。イタリア戦で「噛み付き騒動」を起こしたスアレスは、9試合出場停止に加え4ヶ月間の活動禁止という厳しい処分を受け帰国。代わりにベテランのフォルランがスターティングメンバーに名を連ねた。

28分、ゴール前で跳ね返った浮き球をハメス・ロドリゲスが胸トラップ、巧みなコントロールから左足を一閃すると、芸術的なボレー弾がネットを揺らした。さらに後半の50分、巧みなポジショニングとクレバーな動きでハメスが2点目をゲット、大会1番の輝きを見せた。

こうしてコロンビアがエース不在で精彩を欠くウルグアイを圧倒、2-0と快勝を収めて、初めてのベスト8進出を果たす。

アルジェリアの大健闘

フランスとナイジェリアの戦いは、双方好機を生かせず試合終盤まで0-0の展開。しかし後半途中に投入されたグリーマンが果敢な動きでフランスに流れを引き寄せると、79分にポグバの先制点が生まれた。さらにADタイムにはオウンゴールで追加点、2-0とフランスが勝ち名乗りをあげた。

順調にG/Lを勝ち上がったドイツにとって、格下アルジェリアとの対戦は楽な組み合わせに思えた。その予想通りドイツがボールを支配、しかしゴール前を固める守りと、GKエンボリ(当時、FC琉球在籍)の好守でゴールを割るまでは至らなかった。対するアルジェリアはDFラインの裏を狙って鋭いカウンター攻撃、それをノイアーが再三の飛び出しで的確に対応する。

スコアレスで試合は進むが、行き詰まる攻防戦が続いてゲームは延長戦に突入。その3分、ミュラーの折り返しにシュールレがヒールで流し込み、ドイツ待望の得点が生まれた。延長後半の終了間際にもエジルが追加点、直後にアルジェリアが1点返すが、2-1とドイツが苦戦を制した。

イスラム教の断食「ラマダン」を行いながらアルジェリアは大健闘、大国ドイツを苦しめたハリルホジッチ監督の手腕は高く評価された。

窮地に陥るブラジル

準々決勝は、ブラジル vs コロンビアの南米対戦、ともに10番を背負う22歳の同い年、ネイマールとハメスのエース対決が注目された。開始7分、ネイマールの左CKを、ファーに詰めたチアゴ・シウバが押し込みブラジルが先制。リードされたコロンビアもハメスにボールを集め反撃の機を窺う。

だがボランチのフェルナンジーニョがハメスを徹底マーク、時には激しいタックルで危険な男を封じた。後半の64分、GKオスピナが蹴ろうとしたボールをT・シウバが奪い、無人のゴールへ流し込む。しかしこれは反則を取られてイエローカード、通算2枚目でT・シウバは次戦に出場できなくなってしまった。

その直後、FKでハメスがゴール前にボールを放り込むと、混戦からM・ジュペスが頭で合わせてネットを揺らした。しかしオフサイド判定でゴールは無効、コロンビアは同点のチャンスを逃してしまう。69分、ハメスのタックルでフッキが倒されブラジルがゴール正面でFKをゲット。これをダビド・ルイスが豪快に蹴り込み、リードを2点に拡げた。

追い詰められたコロンビアは反撃を開始。80分にはハメスがマークを外してスルーパス、投入されたばかりのバッカが倒されコロンビアがPKを得る。これをハメスが確実に決め1点差、さらに攻勢をかけて同点を狙う。それに対しブラジルは選手交代で中盤を分厚くし、ラインを高く保つことで逃げ切りにかかった。

88分、ハイボールを処理しようとしたネイマールに、DFスンガが背後から膝蹴りのタックル。苦悶の表情で地面にうずくまるネイマールは担架に乗せられ、そのままピッチの外へ運ばれて緊急搬送されていった。

ブラジルは粘るコロンビアを振り切り2-1と勝利、準決勝進出を決める。しかし診断の結果、ネイマールは第3腰椎骨折の重傷、戦線離脱を余儀なくされた。ブラジルは優勝への正念場となる準決勝を、エースとキャプテンを欠いた状態で戦わざるを得なくなったのだ。

「ミネイロンの惨劇」

同日に行われた準々決勝は、ドイツとフランスの欧州強豪対決となった。13分、クロースのFKをバランに競り勝ったフンメルスがヘッドでゴールに流し込み先制、早くも均衡が崩れた。このあとフランスが反撃をしかけるも、エースのベンゼマがブレーキ、再三のチャンスを外してしまう。

ドイツはリスクを避けた試合運びで安全運転、フランスはノイアーの牙城を破れずスコアレスに終わった。好カードと思われた対戦は予想外の凡戦、ドイツが若いフランスを経験値で上回り1-0と勝利し、準決勝で開催国ブラジルと戦うことになった。

準決勝のブラジル対ドイツは、ミナスジェライナ州ベロオリゾンテの通称ミネイロン・スタジアムで行われた。ブラジルのスコラーリ監督はネイマールに代わりFWベルナルド、T・シウバに代わりDFダントを起用、「出場できなかった彼らのためにも勝たなくてはいけない」と選手に喝を入れた。

開始11分、クロースが蹴った右CKをノーマークのミュラーに決められドイツが先制、早くもブラジルはリードを奪われてしまう。だが試合はまだ始まったばかり、焦る必要など無いはずだった。しかし逆転を願う地元の大声援に冷静さを失ってしまったセレソンたち、縦に急ぐばかりで効果的な攻めが出来ない。

23分、ミュラーがクロースとのパス交換で易々とブラジルの守備を崩すと、クローゼが跳ね返りを押し込んで、W杯得点記録を更新するゴールで追加点。クローゼに新記録達成(通算16点)を許してしまったブラジルだが、これはあとに続く “魔の6分間” の始まりに過ぎなかった。

その僅か1分後、ラームのクロスをミュラーが空振りするも、背後のクロースが合わせて3点目。さらにその2分後、ショートカウンターからケディラとのパス交換で再びクロースが決めた。もはやブラジルの守備は崩壊、29分にはケディラがエジルとのワンツーで5点目を入れる。

カナリアたちの鳴き声

スコラーリ監督は後半開始から一気に二人を交代、ようやく前半の混乱から落ち着いたブラジルは反撃にかかる。それをノイアーが3本連続してピンチを防ぐと、余裕の出てきたドイツはまるで相手をからかうようなパス廻してブラジルを翻弄。それに合わせてブラジルサポーターからも「オーレ、オーレ」の掛け声が上がる始末だった。

69分、クローゼに替わって登場したシュールレが集中の切れたブラジルから6点目、続けて79分にも7点目を決めた。終了直前にオスカルのシュートでブラジルが1点を返すが、もはや焼け石に水だった。7-1と圧勝したドイツは決勝に進出、ブラジルにとっては「ミネイロンの惨劇」と呼ばれる歴史的惨敗だった。

守備の柱、T・シウバを欠いたのが痛手となった形だが、ブラジルの精神弱さは大会中すでに囁かれていた。大きな重圧があったとは言え、国歌斉唱で泣き、PK戦で涙を流すセレソンの姿は「理解できない」とローター・マテウスの眉をひそめさせ、ジーコには「試合に集中していない。敗れて当然だ」と厳しく糾弾された。

コスタリカ 粘りの勝利

攻撃陣が好調なオランダは、トーナメント1回戦でメキシコと対戦。しかし開始早々の9分にデ・ヨングが負傷交代してから守備が不安定となり、後半の48分にメキシコの先制を許してしまう。オランダは56分にデパイ、76分に高さのあるフンテラールを投入して反撃を図るが、GKオチョアのスーパーセーブに阻まれてしまう。

終了が近づいた88分、フンテラールが頭で落としたボールをスナイデルが豪華に蹴り込んでついに同点、試合を振り出しに戻した。さらにADタイムに入った94分、ロッベンがファールを誘いPKを獲得、それをフンテラールがしっかり沈め、オランダが2-1の劇的な逆転勝利を飾った。

「死のグループ」1位通過で大会に旋風を起こしたコスタリカは、ギリシャと対戦。堅守速攻を誇る両チームは互角の戦い、緊迫の展開が続いた。0-0で折り返した後半の52分、ルイスが左足ダイレクトで合わせてコスタリカが先制、しかし66分にDFドゥアルテが2枚目の警告で退場となり、リードしながら防戦一方となる。

それでもGKナバスを中心にギリシャの攻撃を跳ね返し、このまま逃げ切るかと思えたADタイムの91分。パワープレーで上がっていたギリシャのパパスタソフロフが押し込み値千金の同点弾、試合は延長戦となった。しかし死力を尽くした選手たちは疲労困憊、120分を終了してPK戦となった。そしてナバスがギリシャの4人目を止めコスタリカがベスト8進出、またもや小国が世界を驚かせた。

アルゼンチン、ベルギー ベスト8へ

アルゼンチンはFWのアグエロがG/Lで負傷。これまでの3トップから、メッシとイグアインが2トップを組む布陣でスイス戦に臨む。終始優勢に試合を進めるアルゼンチンだが、メッシが人数をかけたスイスのマークに封じられ、決定的な場面が生まれなかった。一方スイスもカウンター攻撃でチャンスをつくるも、フィニッシュが決まらず試合は動かなかった。

試合は90分を終えて0-0、延長に入っても一進一退の状態が続いた。だがPK戦に突入するかと思えた118分、中央でボールを受けたメッシがドリブルでPエリアに侵入、相手DFを引きつけると右サイドへスルーパスを送り、ディ・マリアがダイレクトシュートを決めた。

延長ADタイムにはスイスがポスト直撃のシュートを放つが、一歩およばず試合は終了。延長戦を1-0で勝利したアルゼンチンが準々決勝へ進んだ。

ベルギーとアメリカの試合も0-0のまま延長に突入。そこでベルギーは不調で先発を外れていたルカクを投入、彼のパワーとスピードは疲労困憊のアメリカを揺さぶった。延長の93分、ルカクの力強い突破からデ・ブライネがシュート、この試合初めての得点が決まった。さらに105分にはデ・ブライネのアシストからルカクの追加点が生まれる。

だがその2分後、アメリカは投入されたばかりの19歳グリーンが1点を返し、粘りを見せる。しかし反撃もそこまで、最後はベルギーが迫るアメリカをかわし、2-1と勝利して32年ぶりのベスト8進出を果たした。

ファン ハールの奇策

準々決勝に進んだオランダは、快進撃を続けるコスタリカと対戦。強力な攻撃陣で攻め込むオランダに、コスタリカは統制の取れた守備とGKナバスの好守で対応、再三のピンチを防いた。0-0のまま延長後半に入ると、疲労から双方の足が止まって膠着状態、PK戦突入が濃厚となった。

ADタイムの121分、ファン ハール監督はGKシレッセンを下げ、“PKストッパー” のクルルをピッチに送り出す。その期待通り、PK戦ではクルルがコスタリカの2本を鋭い読みでストップ、ファン ファール監督の奇策が当たり、勢いに乗るコスタリカを破ってオランダが準決勝へ勝ち上がった。

いずれも接戦となった準々決勝最後の対戦は、アルゼンチンとベルギーの試合。開始8分、メッシのキープからディ・マリアにボールが渡り、パスがDFの足に当たったところをイグアインが拾ってシュート、アルゼンチンに先制点が生まれた。

リードしたアルゼンチンは、ボランチのマスケラーノを中心に、高い守備意識と戦う姿勢で虎の子の1点を死守。ベルギーの高さと厚みのある攻撃を跳ね返し、1-0と勝利して準決勝へ進んだ。しかしキレのある動きを見せたディ・マリアが太ももを痛めて負傷交代。準決勝への出場は難しくなり、アルゼンチンにとって大きな痛手となった。

アルゼンチン 24年ぶりの決勝進出

準決勝のオランダ対アルゼンチン戦。攻撃を牽引したディ・マリアを欠き、頼みのメッシも厳しいマークの前に沈黙、少ないチャンスに得点は生まれなかった。一方のオランダも、激戦が続いた影響でロッベンとファン ペルシーの動きが重く、両チーム見せ場の少ない試合となってしまった。

試合はスコアレスで延長に突入、得点が決まりそうな気配もなく、120分が終了して勝負はPK戦にもつれ込んだ。コスタリカ戦でヒーローとなった“PKストッパー” のクルルは、3人の交代枠を使い切っていたため出番なし、正GKのシレッセンはアルゼンチンのPKを1本も止められなかった。反対にアルゼンチンは4人全員が成功し、GKロメロがオランダの2本を止める好守、24年ぶりとなる決勝進出の立役者となった。

このあとオランダとブラジルの3位決定戦が行われ、戦意喪失のブラジルはオランダに3-0と完敗。恥の上塗りとなったセレソンには、満員の観客からブーイングが浴びせられた。

南米陥落 ドイツ4度目の王者に

7月13日、24年ぶりとなったドイツ対アルゼンチンの決勝は、マラカナン・スタジアムに7万5千人の観客を集めて行われた。地元ブラジルに大勝したドイツを相手に劣勢が予想されたアルゼンチンだが、開始からアグレッシブな動きでドイツの攻撃をストップ、ボールを奪うと素早くカウンターに繋げた。

21分、クロースのバックパスミスをイグアインが奪いノイアーと1対1、焦って打ったシュートはゴール左へ外れていった。30分にはメッシの大きな展開からアルゼンチンがドイツのネットを揺らすが、これはオフサイドとなってしまった。

31分、試合前のアップで故障したケディラに代わり急遽先発したクラマーが、脳しんとうでシューレルと交代。アルゼンチンの動きに戸惑うドイツへさらなるアクシデントが襲った。しかしこの交代後からドイツのパスが回り始め、徐々にチャンスが生まれ始める。

後半開始からアルゼンチンはアグエロを投入。トップ下に降りたメッシが果敢なドリブルで仕掛けるも、アルゼンチンの攻撃はノイアーの好守に阻まれる。一方落ち着きを取り戻したドイツも終盤に再三の好機を迎えるが、アルゼンチンの堅守にゴールは奪えないままだった。

88分、ドイツはクローゼに代えてゲッツェを投入、決勝は3大会連続の延長戦へ突入する。延長戦の前半はともに決定的な形を作るも得点に至らず、延長の後半に入ると両チームに疲れが見え始める。そして延長も大詰めを迎えた113分、シュールレが左サイドをドリブル突破してクロス。ゴール前に走り込んだゲッツェが、胸トラップからボレーシュートを決めた。

リードされたアルゼンチンは、終了直前にFKのチャンスを獲得。しかしメッシのキックはゴールを大きく外れ、延長となった決勝はドイツの1-0で決着した。

ドイツは6大会ぶり4度目の優勝、欧州のチームが南米開催の大会を制覇したのは史上初だった。大会MVPにはリオネル・メッシが選ばれ、6ゴールを記録したハメス・ロドリゲスが得点王を獲得した。

次:第21回ロシア大会-前編(2018)

カテゴリー サッカー史

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