米アカデミー賞の授賞式が27日(日本時間28日)にロサンゼルスのドルビーシアターで行なわれ、最高の栄誉とされる作品賞には、本番が近づくにつれ尻上がりに評価を上げた『コーダ あいのうた』(シアン・ヘダー監督)が選ばれた。
『コーダ あいのうた』は、耳の不自由な両親と兄を持ち、家庭内では唯一耳が聞こえる少女の夢と葛藤を映画いた作品。14年のフランス映画『エール!』のリメイクで、オリジナル作よりさらに感動を生む内容でアカデミー会員の支持を得て、脚色賞も受賞した。
他にも、ヒロインの父親を演じた難聴者俳優トロイ・コッツァーが助演男優賞を受賞。授賞式では手話で感謝の言葉を述べている。
作品賞の本命にはNetflix映画『パワ・オブ・ザ・ドッグ』が挙げられていたが、やはり配信作品のカベは越えられなかったよう。今回最多の11部門にノミネートされていたが、受賞となったのはジェーン・カンピオンの監督賞のみだった。
ジェーン・カンピオンの監督賞は、女性としてキャスリン・ビグロー(09年『ハート・ロッカー』)、クロエ・ジャオ(21年『ノマドランド』)に続く3人目の受賞となった。
日本映画としてしては初めてとなる作品賞や監督賞を始め、4部門にノミネートされて話題となった『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜助監督)は国際長編映画賞を受賞。外国語映画賞と呼ばれていた頃を含め、76年の『デルス・ウザーラ』(黒澤明監督)、09年の『おくりびと』(滝田洋二郎監督)に続く3度目となる日本映画作品の受賞である。
『おくりびと』の時には、受賞に向けて大々的なプロモーションが行なわれたと言われているが、『ドライブ・マイ・カー』は純粋に作品の魅力が評価されての栄誉となった。
そして主演男優賞はウィル・スミス(『ドリームプラン』)、主演女優賞はジェシカ・チャスティン(『タミー・フェイの瞳』)、助演女優賞はアリアナ・ボーズ(『ウェスト・サイド・イストーリー』)脚本賞は『ベルファスト』(監督・脚本、ケネス・ブラナー)が受賞。
SF大作『DUNE / 砂の惑星』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)は、撮影賞や資格効果賞など技術部門を中心に最多6つのオスカーを獲得した。
この式典の最中、長編ドキュメンタリー賞のプレゼンターを務めていたコメディアンのクリス・ロックが、壇上でウィル・スミスに平手打ちされるという騒動が発生。ロックが脱毛症に悩むスミスの妻、ジェイダ・ピンケット・スミスの短い髪をからかうようなジョークを口にし、それにスミスが激怒したことが原因だった。
このあと主演賞のオスカーを手にして壇上に立ったスミスは、涙ながらに晴れ舞台での事件を弁明。翌日にはインスタグラムで謝罪のコメントが投稿された。
しかし授賞式の運営組織からは、「いかなる暴力も許されない。当方の規則や行動基準、カルフォルニア州の法律に則って、さらなる対応を検討する」との声明が出され、ビンタ騒動はまだまだ落ち着きそうにない。
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