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ジョン・シュレンジャー監督「真夜中のカーボーイ」

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アメリカン・ニューシネマの傑作

1969年公開の『真夜中のカーボーイ』は、ジェームズ・レオ・ハーリヒーの同名小説を原作とした “アンチヒーロー” の青春映画。アメリカ神話の崩壊やカウンター・カルチャーに揺れ動く60年代末の退廃した雰囲気を端的に描く「アメリカン・ニューシネマ」の傑作だ。

監督は『遙か群衆を離れて』(67年)『日曜日は別れの時』(71年)で知られるイギリス人のジョン・シュレンジャー。現代ニューヨークの底辺に生きる青年たちの挫折を、英国人らしく辛口な批評眼で描き出し、そのシャープな映像感覚が評価された。

主演はジョン・ボイトとダスティン・ホフマン。この作品は第42回アカデミー賞の6部門にノミネートされ、そのうち作品賞、監督賞、脚色賞(ウォルド・ソルト)の3部門で受賞。主題歌『うわさの男』も大ヒットした。

ニューヨークの底辺でもがく青年たち

主人公のジョー・バック(ジョン・ボイト)は、テキサス原野の真っ只中にあるスーパーで食堂の皿洗いをしている頑丈な青年。その肉体的魅力で金と女を手に入れようと、ビラビラ飾りのカウボーイ姿でニューヨークにやってくる。

ところが都会の現実は厳しく、田舎者のジョーは行きずりの娼婦に同情して大金を巻き上げられる始末。そんな彼に声を掛けてきたのが、ペテン師を生業とする青年で「ラッツォ」の異名を持つエンリコ・リッツォだった。

ジョーは一度ラッツォから金を騙し取られるも、根がイノセントな彼は片足が不自由で結核持ちのラッツォと廃墟のビルで一緒に暮らし始める。まさにドブネズミ同士が、人生で唯一共感できる仲間を見つけたのだ。

その二人のドブネズミの共有した夢というのが、いつか金持ち女のヒモになって財産を貯め、温暖なフロリダで悠々自適の生活を送ることだった。

ひょんなきっかけからジョーのジゴロ家業が軌道に乗るかと思えたが、その頃ラッツォの病状が悪化。ジョーは仕方なくホモの紳士の相手をし、その男から拳を使って金を強奪。瀕死のラッツォともにマイアミ行きのバスに乗り込む。

男たちの挫折と希望

希望と自信の象徴であるカウボーイ・スタイルが売春の小道具に墜ちてゆき、夢のためのフロリダ行きが “死の旅” へと転じていく絶望的内容を、シュレンジャー監督はアメリカ人には踏み込めない冷徹さとリアリズムで描き出した。

それでも、ラストでジョーが冷たくなったラッツォの肩を抱き寄せ、キッと前方を見つめる眼差しが、一点の光明を指し示している。

ジョン・ボイトはこのとき30歳と遅咲きながら、『真夜中のカーボーイ』でアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるなど、一躍注目される俳優となった。

もう一人の主役ダスティン・ホフマンは、本作が『卒業』(67年、マイク・ニコルズ監督)に続く映画出演第2作目。前作の裕福な家庭の悩める青年役から一転して、ニューヨークの底辺にうごめく惨めな人間を見事に演じ、演技巧者ぶりを見せつけている。

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