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深作欣二監督「仁義なき戦い」

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“実録ヤクザ映画” の記念碑的作品

1973年公開の『仁義なき戦い』は、飯干晃一の同名ノンフィクション小説を原作に、戦後もっとも激しい抗争が繰り広げられた広島ヤクザ戦争の始まりを、有象無象の人間たちのドラマとして昇華して描いた、深作欣二監督による実録ヤクザ映画。

時代劇的な様式美を打ち出し人気を得た東映の“任侠路線” も、1970年代に入ると翳りを見せてくるようになり、それに代わって企画されたのが、実際に起きた暴力団抗争をドキュメンタリータッチの迫力で描いた『仁義なき戦い』である。

主人公の広能ひろの昌三を演じるのは、これが出世作となった菅原文太。またこの作品は、裏社会でうごめく人間たちをリアルに活写した群像劇となっており、金子信夫、松方弘樹、田中邦衛、渡瀬恒彦、梅宮辰夫といった役者たちが新境地を拓いた。

荒々しさの魅力

舞台は敗戦直後の広島県呉市。闇市をうろついていた復員兵の広能昌三は、土居組の若頭衆・若杉(梅宮辰夫)と知り合い、その男気を買われて友好組織の山守組に属することになる、

広能は度胸ときっぷの良さで次第に頭角を現し、組織拡充の先兵となって大活躍。やがて山守組は勢力を拡大していくが、暗躍を繰り広げる組長(金子信夫)と、若頭衆・板井(松方弘樹)を巡る内紛が勃発。他勢力も巻き込んだ、血で血を洗う抗争が激化していく。

多彩な登場人物を巧みに整理して描きわけた笠原和夫の脚本、手持ちカメラによる荒々しいブレを効果的に用いた映像、津島利章の古典的ともいえる主題歌の単調な繰り返しが、独特のリズムをバイブレーションを生んで男たちの争心を煽りたてる。

従来の任侠映画とは一線を画したヤクザの実態が抽出されるとともに、原爆を落とされた広島という街そのものを象徴とした戦後史が、生々しくかつ濃密に描きだされた。

俳優たちが使う広島弁も、その独特のイントネーションが耳から離れないほど魅力的。義理も人情もない実力だけの暴力社会に不思議にマッチしている。

ラストで坂井の葬式に現れた広能が、祭壇に向かって発砲するシーンは圧巻。菅原文太が演じた武闘派ヤクザがまさにホンモノの匂いを漂わせ、その野犬のような迫力とギラギラ視線で新しいヒーロー像をつくりだした。

定着した “実録路線”

公開されると作品は世間と批評家の大きな反響を呼び、1973年度キネマ旬報ベストテンの第2位、脚本賞(笠原和夫)、男優賞(菅原文太)、読者選出ベストテン第1位を獲得。

映画はすぐに菅原文太主演でシリーズ化され、ヒットを続けたことから『仁義なき戦い 広島死闘編』『仁義なき戦い 代理戦争』『仁義なき戦い 頂上作戦』『仁義なき戦い 完結編』(73~74年)と4つの続編が製作された。

さらには深作監督でスピンオフ的な『新・仁義なき戦い』シリーズが3本(74~76年)、その後も監督を代えて同タイトルを冠にした作品が3本(79、00、01年)つくられている。

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