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デヴィッド・リーン監督「戦場にかける橋」

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戦争の愚かさを描く不朽の名作

米英合作映画の『戦場にかける橋』(57年)は、第二次世界大戦の真っ只中、タイとビルマ(現ミャンマー)の国境にある日本軍捕虜収容所を舞台に、戦争の愚かさとヒロイズムの挫折を描きだした不朽の名作。

監督はイギリスの巨匠、デヴィッド・リーン。それまで『逢いびき』(45年)や『旅情』(55年)など、大人のメロドラマを描く名手として知られていたが、この『戦場にかける橋』では一転して極限の状態に生きる男の壮大なドラマをつくりだした。

以降は『アラビアのロレンス』(62年)『ドクトル・ジバゴ』(65年)『ライアンの娘』(70年)『インドへの道』(84年)と、大自然のスケールをバックに人間の繊細な心理描写を紡ぐ大作を発表していく。また異文化の衝突と邂逅も、後期のデヴィッド・リーン作品に一貫するモチーフである。

ストーリー

ビルマ戦線のジャングルに置かれた日本軍捕虜収容所には、アメリカ海軍の兵士であるシアーズ(ウィリアム・ホールデン)を始め、捕虜となった多くの兵士が収容されていた。そこにまた、ニコルソン大佐(アレック・ギネス)率いるイギリス軍捕虜の一団が移送されてくる。

イギリス軍捕虜たちの前には収容所所長の斉藤大佐(早川雪洲)が現れ、泰緬鉄道を結ぶ橋の建設作業への全員参加を命令する。しかしニコルソン大佐は “ジュネーブ協定” を盾に、将校に労働を課すことは出来ないと拒否。炎天下の営倉に放り込まれても主張を変えようとしなかった。

クワイ河へ架ける鉄道橋の工事は、労働に狩り出された英軍捕虜のサボタージュにより遅々として進まず。この状況に斉藤所長はニコルソン大佐の要求を呑まざるを得なくなり、英軍将校の指揮による橋建設が始まった。

敵を利するはずの橋建設に喜びさえ感じるようになったニコルソン大佐。それまで対立していた斉藤大佐とも共通の目標に意思を通じるようになり、無意識下の友情さえ芽生え始める。

そしてクワイ河に架かる橋は無事完成するが、収容所を脱走したシアーズらで編成された英軍破壊工作隊が現地に潜入。完成したばかりの橋は大爆発とともに崩れ落ちた。

見応えのある人間ドラマ

ジャングルで本当に造られた鉄道橋が、通過する列車もろとも崩壊するクライマックスは圧巻の場面。嘘くささしか感じられない今どきのCGでは、とうてい味わうことのできない本物の臨場感と迫力の映像だ。

絶望的なラストと、悲惨な光景を目の当たりにして「狂気だ、狂気だ」と嘆く英軍工作員。人間の愚行と戦争の虚しさを虚実に現しているが、この作品が単なる反戦映画にとどまらないのは、登場人物を奥深く描く監督の確かな手腕にあるのだろう。

ニコルソン大佐、斉藤大佐、米兵シアーズら主要人物を捉える視線はあくまでもフラット。敵味方を越えた孤高な男のぶつかり合いと矜持を、リーン監督が端正な演出で浮かび上がらせ、見応えのある人間ドラマとしている。

米アカデミー賞7部門を受賞

57年に公開された本作は、軽快かつ勇壮な『クワイ河マーチ』とともに大ヒット。第30回アカデミー賞では、作品賞、監督賞など7部門を受賞するほどの高い評価を受けた。

ニコルソン大佐を演じたアレック・ギネスは主演男優賞を受賞。彼はこのあと『アラビアのロレンス』と『ドクトル・ジバゴ』にも出演し、重厚な演技でデヴィッド・リーン作品を支えた。ちなみに46年のギネス映画デビュー作『大いなる遺産』も、デヴィッド・リーンが監督を務めている。

斉藤大佐を演じた早川雪洲も助演男優賞にノミネートされていたが、残念ながら受賞を逃している。ちなみにこの時のアカデミー賞で助演女優賞を受賞したのが、日本人俳優のナンシー梅木(『サヨナラ』で受賞)。アジア人初のオスカー獲得となった。

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