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アンリ=ジョルジュ・クルーゾ「悪魔のような女」

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女性犯罪者を扱った心理サスペンス

1955年公開のフランス映画『悪魔のような女』は、ピエール・ボワロとトマ・ナルスジャック共著の同名小説を原作としたサイコスリラー作品。

監督は『情婦マノン』(49年)『恐怖の報酬』(53年)などで知られるフィルム・ノワールの名匠、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー。『恐怖の報酬』が爆発物という即物的な恐怖を軸にしているのに対し、本作品は犯罪者の心理サスペンスとしてストーリーが進む。

シモーレ・シニョリとクルーゾー監督の妻であるヴェラ・クルーゾーが、完全犯罪に挑む女性2人を熱演。ことにシモーレ・シニョリの悪女ぶりは際立っていた。そこにクルーゾー監督は、サスペンス展開にホラー風味を加えた演出で観客を惹きつけた。

サスペンスからホラーへと展開

舞台はパリ郊外にある寄宿小学校。妻クリスティーナ(ヴェラ・クルーゾー)の資産で学校を設立し、校長となったミッシェル(ポール・ムーリス)は、横暴な振る舞いで病弱の妻を苦しめていた。

ミシェルの愛人でもある同校の女性教師ニコール(シモーレ・シンヨリ)は、そんなクリスティーナに同情。彼女と共謀してミシェルを殺害しようと計画を持ちかける。

2人はミシェルをニコールのアパートに呼び出し、睡眠薬を飲ませてバスタブで溺死させる。そのあと学校のプールに死体を沈めて隠匿を謀るが、後日ある理由でそこの水を抜くと、不思議なことにミッシェルの亡骸は消えていた。

それからというものの、2人の周囲にはミシェルが生きているかのような物証が次々と判明。すると元刑事のフィチェット(シャルル・ヴァネル)も事件に介入しだし、クリスティーナとニコールは次第に追い込まれていく。

ミステリーホラーの古典

人物関係のみの組み立てで、ストーリー運びのサスペンス、なにげない描写からの意表を突く演出、細部への目の届かせ方と、ミステリーホラーの模範となった作品。今見ると多少の古くささを感じないではないが、観客に不安とショックを与えるサスペンス劇の先駆となった。ことにラストの悪趣味な浴槽シーンは有名で、後世に色々な作品で模倣されている。

原作のミステリー小説はホラー仕立てが特徴となっていたが、映画はクルーゾー監督のどぎつい演出による心理劇。登場人物を不意に陥れる展開が秀逸で、クルーゾーの「グランギニョル(見世物小屋的劇)趣味」と評される描写により、ヒッチコックとは違った悪魔のような世界をつくりだす。

また繊細なクリスティーナと、ふてぶてしいニコールの対比はまさに組み合わせの妙。事件に介入してくる元刑事のフィチェットも飄々とした味を出し、それが却って女2人の恐怖心を煽る効果を生んでいる。

クリスティーナを演じたヴェラ・クルーゾーは、このあと夫の浮気により神経衰弱に陥ってしまう。60年12月にはパリのホテルで心臓発作を起こして急死。これには服毒自殺という説もあり、映画さながらの顛末となった。

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