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森田芳光監督「家族ゲーム」

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異色のホームドラマ

1983年公開の『家族ゲーム』は本間洋右の同名小説を原作に、現代の家族のありようを軽妙ながら醒めた視点で見据えた異色のコメディ・ホームドラマ。

高校受験を控えた落ちこぼれの次男のために、風変わりな大学生が家庭教師として雇われたことから巻き起こる騒動を、シュールなタッチで描いていく快作。

監督は当時33歳の俊英、森田芳光。才気あふれる演出と映像表現が注目を浴びた。まるでメフィストのように振る舞う家庭教師・吉本勝を松田優作が怪演し、俳優としての新境地を拓いた。

沼田家の次男・茂之を宮川一朗太、父親の孝助を伊丹十三、母親の千賀子を由紀さおり、長男の慎一を辻田純一が演じ、どこかずれている家族の希薄な関係を醸し出している。

ストーリー、のようなもの

高校受験を控えた劣等生の次男・茂之のために、沼田家は吉本を家庭教師に雇う。沼田は三流大学の七年生。いつも植物図鑑を持ち歩き、なぜか河畔の沼田家に船で上陸する。

勉強ばかりか、ケンカの仕方まで茂之に教える吉本。その結果いじめられっ子だった茂之は、同級生の土屋(土井浩一郎)をやっつけることができた。成績も尻上がりとなり、兄・慎一と同じAクラスの西武高校合格ラインに追いつき、ついに追い越してしまう。

そして茂之はみごと高校受験に合格し、吉本の役目は終了。沼田家で行なわれたそのお祝いパーティーの席上で、今度は兄・慎一の大学受験の世話を頼まれる。しかし吉本は、「一流大学の受験生を三流大学の学生が教えられるはずがない」と断るだけでなく、なんとその場で大暴れ。食卓は大混乱に陥った。

森田芳光監督の演出

テーブルに横一列に並んで食事する家族を捉えた構図、勉強机からの視点で見た家庭教師と教え子のささやき声による会話、音楽を一切排して現実音を増幅する効果、ラストの姿を現さないヘリコプターの音にいたるまで、森田演出の計算は緻密で斬新。ならではのドラマに即応した実験精神が功を奏し、普通に見えながらどこかずれている家族のエゴがスリリングに暴かれていく。

目玉焼きの黄身だけをチュウチュウ吸いとる父の孝助、とぼけた味わいの母・千賀子など、ユニークな人物描写が秀逸。映画は公開されるやたちまち話題を呼び、1983年度のキネマ旬報ベストテン第1位、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール最優秀作品、ヨコハマ映画祭作品賞など、国内の映画賞を総なめ。このあと2度もテレビドラマ化もされている。

81年に『の・ようなもの』でデビューした森田監督は、以降シリアスドラマ、コメディ、アイドル映画、文芸作、ラブストーリー、ホラー、ミステリー、時代劇と多彩なジャンルで注目作を発表するなど新時代の旗頭として活躍した。

だがその一方、才能を過信したのかあれこれ手を出しすぎ、何を描きたいのか分からないような凡作、愚作も多かった印象。キャリアの後半生はこれといった代表作を生み出すこともなく、61歳の若さで亡くなってしまったのは残念だった。

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