女性アイドルの変遷 1970年代

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NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』で演歌(艶歌)は作家五木寛之の小説で定義づけられ、1970年前後に一つのジャンルとして確立したという説が紹介されていた。それまでは一様に歌謡曲と呼ばれていたものが、多様化の時代になってジャンル分けが必要となったらしい。そしておそらく同じ頃、アイドルという存在も多様化の波に乗って一大ジャンルとなったものと想像される。

それまでもアイドルと呼ばれる歌手や芸能人は、その時その時でぽつぽつ存在していた。それがひとつのジャンルと認識され始めたのが1970年代初頭、新御三家と呼ばれた西城秀樹・郷ひろみ・野口五郎や、新三人娘と呼ばれた天地真理・小柳ルミ子・南沙織が活躍しだした頃である。物質的に豊かな時代が訪れ、若年文化がテレビの生み出すスターたちにも影響を与えるようになったのだ。

その時代の流れを受け、新しいアイドルたちを送り出すべく生まれた番組が『スター誕生!』である。これは当時の最大勢力であり強権を振るっていた大手芸能事務所の渡辺プロダクションに対抗すべく、日本テレビが制作したオーディション番組であった。


この番組でチャンスを得た若者たちが次々とデビューを果たし、森昌子・桜田淳子・山口百恵らがたちまち人気者なって花の中三トリオと呼ばれるようになる。他にも岩崎宏美や石野真子など人気歌手を輩出し多くの若者たちを引きつける番組として『スター誕生!』はアイドル界の主流となる。

他にも70年代を彩った女性アイドルとして、麻丘めぐみ・アグネスチャン・キャンディーズ・榊原郁恵・高田みづえなどが挙げられるが、その中にはピンクレディーのように変化球的味付けをして爆発的人気を博したアイドルユニットも現れた。

一般的に70年代の女性アイドルたちは、見た目が可愛ければそれで良かった。ニコニコしながら綺麗な衣装で歌っていればそれで良かったのだ。気の利いたことを喋る必要もなければ、歌手としての技量さえ高いものを求められてはいなかった時代だった。

そんな中で、山口百恵はデビューの頃から普通のアイドルと一線を画していた。中学生とは思えない落ち着きと陰の魅力、そして人におもねることのない雰囲気。そんな彼女の個性を活かすべく背伸びをしたような歌が作られていったが、5曲目のシングルでいっそう際どい内容を含む曲「ひと夏の経験」が発売されるやいなや大きな話題となった。その年出演したドラマや映画も大ヒットし、たちまち彼女は大スターの仲間入りをする。

しかし、この時代の山口百恵はまだ未熟な存在だった。歌は単調で表現力に乏しく、音程も不安定だ。女優としてもその演技は棒に近くて、魅力的な美人とも言えない。ただ何かは分からないが彼女からは想いの強さが発せられ、そこには人を魅了するものがあったのだ。

売れっ子にはなった山口百恵だが、それはそれで葛藤を抱えることになる。きっと彼女の中にはアイドルの殻に押し込まれ、大人の操り人形として扱われることに大きな抵抗があったのだろう。それは強い自我を持ち、己の意思を貫こうとする山口百恵ならではのものだった。

16歳の時、山口百恵はその殻を破るべく決断をする。自分というものを表現するため、彼女自身の希望で新曲の作詞・作曲者を指名したのだ。最初はイメージが違いすぎるとスタッフに反対されたが、彼女の意思を尊重した音楽プロデューサーによってなんとか実現することになる。それが宇崎竜童・阿木燿子夫妻との出会いとなり、二人によってアイドルとしてのカテゴリーを越え、山口百恵の本質に迫ろうとした歌『横須賀ストーリー』が誕生した。

この歌のヒットによって山口百恵はアイドルの枠から抜け出し、一人の歌手としてのアイデンティティを確立する。ここから彼女の歌の世界は広がり、表現力も豊かになって歌唱力も増していった。

やがて彼女の確固とした存在感を表現した一つの完成形となる歌が生まれる。同じ宇崎・阿木夫妻作詞作曲による『プレイバックPartⅡ』だ。この頃鼻垂れ小僧だった私にとっては、この曲を歌う彼女の視線の強さが、動じない女性として安定感を感じさせ心を引きつけてやまないのだ。

この歌は一時安定飛行で落ち着きかけていた山口百恵を、さらに一つ上のステージに引き上げた。そののち『いい日旅立ち』や『しなやかに歌って』など情感豊かに歌った曲もヒットして、もはや山口百恵は現象となり女性たちにとって大きな指針となる存在となった。

押しも押されぬ大スターとなった山口百恵だが、その環境の中で彼女は冷静に自己の幸福を追求し始める。そして、その答えが芸能界にはなく、結婚とそれに伴う引退を選んだのは必然の結果だったのだろう。1980年10月、8年足らずの芸能生活で伝説を築いた山口百恵はステージ中央へ静かにマイクを置くと、21歳の若さで神話の彼方へと姿を消していったのだ。

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