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映画「カッコーの巣の上で」

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アカデミー賞5部門独占の話題作

ケン・キージーが60年代初めに発表した小説を基に、はぐれ者や非健常者が抑圧され管理される社会での、自由や人間の尊厳を希求したアメリカンニューシネマの傑作が、76年の『カッコーの巣の上で』だ。アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚色賞・主演男優賞・主演女優賞と主要五部門を独占、興行的にも大ヒットし、この年の話題となった。

監督は「プラハの春」によりチェコスロバキアから亡命した、ミロス・フォアマン。寡作だが後に『ヘアー』や『アマデウス』などの名作を世に送り出している。製作を担当したのはソウル・ゼインツと、大物俳優カーク・ダグラスの息子マイケル・ダグラス。

マイケル・ダグラスは元々映画製作者として映画界に入ったが、この作品の製作者として脚光を浴びたことで、人気俳優としての道を歩むことになる。

主演は当時ニューシネマの新鋭として注目されていたジャック・ニコルソン。この『カッコーの巣の上で』での憑かれたような熱演で、怪優の代表的存在と呼ばれることになる。

精神病院の患者を管理支配する冷徹なラチェッド婦長役に演技派のルイーズ・フレッチャー、非健常者のフリをして精神病院で暮らすネイティブ・アメリカンのチーフをウィル・サンプソンが演じている。

その他精神病の患者には、当時無名だったダニー・デヴィートやクリストファー・ロイド、スキャットマン・クローザースといった、以降活躍する個性派俳優たちの顔ぶれが見える。

ロボトミー手術の恐怖

刑務所での重労働を逃れるため、精神疾患者を演じて精神病院に移送されてきたマクマーフィー(ニコルソン)。だがその精神病院は、刑務所より遙かに人間性と自由を奪う場所だった。この病院で強い権限を持ち、患者たちを管理し支配するラチェッド婦長。

自由人マクマーフィーはそんな病院の管理体制に疑問を抱く。そして婦長に反抗するように、患者たちにバスケットをさせたり無断外出で海釣りに連れて行った、彼らの人間性を取り戻させようとする。

物語のヒール役ラチェット婦長だが、見方を変えれば自分の使命を厳格に果たそうとする有能な管理者とも言える。一筋縄ではいかない精神疾患者を看るには、やはりあれだけの厳しさも必要なのだろう。だが、ラチェッド婦長が患者を人間として扱っているかと言えば、必ずしもそうではないのだ。

手が付けられなくなった患者に施すのは、電気ショック療法。そして究極的には、脳をいじって人間性を喪失させる、ロボトミー手術の手段も執られる。まさに精神治療の名を借りた、自由の抑圧と人間の尊厳への冒涜だ。

人間性の解放

脱走を決意したマクマーフィーは、クリスマスの夜に女友達を病棟に連れ込んでらんちき騒ぎ。しかしその騒動が翌朝露見、ラチェッド婦長の厳しい対応により、若者の患者ビリーが自殺に追い込まれてしまう。

怒りに震えるマクマーフィーは婦長を押し倒し、首を絞めて殺そうとする。そして入院患者から隔離されたマクマーフィーが戻ってきたときには、ロボトミー手術が施され、彼の人間性は失われていた。事実上病院に殺されてしまったマクマーフィー。そんな彼を救うためチーフは枕を顔に押し当て、人としての尊厳的な死を与える。

ラストは奇跡を起こし、マクマーフィーと約束した病院からの脱出をはかるチーフ。マクマーフィーの犠牲を持って、自分を解放するネイティブ・アメリカン、チーフの走り去る姿。ニューシネマらしく悲劇に終わりそうなこの映画に、希望を与えたまさに感動的なラストシーンだ。

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